1950年代にストラトキャスターやレスポールが登場し、今なお世界中のギタリストに愛されています。
しかし、そんなセールス的に成功を収めたギターの裏には必ず失敗...否、あまり売れずに姿を消してしまったモデルも存在します。
そこで今回はそんな不遇な(?)運命を辿ったギター達を紹介していきます。
今回はGibson編。
Fender編は以下の記事で紹介しています↓
Advanced Jumbo
1936〜1938年に生産されたアコギです。
ボディシェイプはJ-45と同じラウンドショルダーですが、Advanced Jumboはバックとサイドにローズウッド(ハカランダ)を採用しており、当時売れていたMartin D-28に対抗して製作されたモデルであるとの噂も。
300本ほどの少ない生産数でしたが、現在でも高い評価を受けているギターです。
これまで何度か再販されていたりもするモデルです。
Futura
エクスプローラーのプロトタイプとして1957年に4〜6本のみ製作されたギター。また、初期のエクスプローラーはFuturaという名前で販売されていました。
ボディ、ネック共にマホガニーやコリーナで製作されていたようです。
現在のエクスプローラーを細くしたようなボディシェイプに「スプリットV」と呼ばれる特徴的なヘッドストックを持っています。
1996〜2008年までの間Gibson Custom Shopの手によってリイシューされたものが販売されていました。
Moderne
フェンダーのソリッドギターに対抗すべく、エクスプローラー(フューチュラ)、フライングVと共にプロトタイプとして1957年に製作されたギターです。
エクスプローラやフライングVと同じくコリーナやマホガニー製のボディにマホガニー製のネックという構成。
これまでのGibson製のギターとは一線を画す奇抜なボディシェイプでしたが、Moderneだけはプロトタイプ止まりで実際には製品化されることはありませんでした。(エクスプローラーとフライングVは製品化)
1982年にEpiphone製で、2012年と2019年にはGibson USAの手によってリイシューモデルが販売されました。
Heritage (Custom)
1965年から1970年代中頃まで生産されていたアコギです。
ブリッジやポジションマークのインレイはHeritageオリジナル。
販売当初はハカランダを使用したモデルでしたが、1969年にローズウッド単板へとモデルチェンジしました。
Ripper(L-9S) / Grabber / G3
RipperとGrabberは1973〜1983年に、G3は1975〜1985年にそれぞれ生産されていたベースです。
この3つのモデルは兄弟機で、ボディシェイプは同一。
Ripper
セットネック構造のボディにビル・ローレンスが設計したスーパーハムバッカーが2基搭載されています。
Grabber
ボルトオンのボディにGibsonオリジナルのハムバッカーを1基搭載しています。
このモデルはピックアップを前後にスライドできる構造を採用しています。
G3
Grabberの可動式ピックアップの代わりに3つのシングルコイルピックアップを搭載したモデルです。(G3のピックアップは可動しません)
L-6S
L-5Sと呼ばれるジャズ向けモデルの後継機で、1973〜1979年の間に生産されていたギターです。
Gibsonのギターで初めて24フレットを採用したモデルでした。
レスポールを太っちょにしたようなボディシェイプをしており、ボディ、ネック共にメイプル製。ビルローレンス設計のハムバッカーが2基搭載されています。
L-6Sにはいくつかグレードがあり、カスタム、ミッドナイトスペシャル、デラックスの3つがラインナップされていました。
Marauder
1974〜1979年に生産されていたギターです。
ボディシェイプはレスポールと同一ですが、ボルトオンネックを採用していたり、テレキャスターカスタムのようにフロントにハムバッカーを、リヤにシングルコイルを搭載していたりするなど、フェンダーに対抗して製作されたギターであることがわかります。
S-1
1974〜1980年にかけて製造されたモデルです。
レスポールのようなシェイプのボディにフライングVのメイプルネックをボルトオンで固定しています。
シングルコイルピックアップを3基搭載しているものの、スイッチ切り替えによってハムバッカーとしても出力できるように構成された回路を持っています。
先述のMarauder同様フェンダーのギターを意識したモデルですね。
RD
シンセサイザー生みの親であるロバート・モーグ氏とGibsonが共同開発し、1977〜1979年に生産されていたギター。
ファイヤーバードをより曲線的にしたようなボディシェイプが特徴で、ボディ・ネック共にメイプル製です。
レスポールのようにスタンダードやカスタムなどのグレードがありました。
特に最上級モデルのアーティストにはブライトスイッチやイコライザー、コンプレッサーなどのアクティブ回路が組み込まれており、電子工学者でもあるロバート・モーグ氏のアイデアが数多く採用されています。
2009年に日本限定で再販されていました。
Sonex
Fenderのギターに対抗すべく登場したMarauderとS-1の後継機として1980〜1984年に生産されたモデルです。
形こそレスポールそっくりですが、Resonwoodと呼ばれる合成素材でできたボディにメイプルネックがボルトオンで固定されています。ピックアップはDirty FingersやVelvet Brickなどのハムバッカーが搭載されていました。
Victory
1981〜1983年に生産。
ストラトのようなシェイプのメイプルボディにメイプルネックという組み合わせです。オプションでケーラー製のトレモロを選択することもできました。
MV2とMVXという2種類のグレードがあり、MV2は2ハム、MVXは3ハムバッカーを採用。(MVXのセンターピックアップはSuper Stackと呼ばれるシングルサイズハムバッカーです)
当時ヒットしていたIbanezやJacksonのスーパーストラトに対抗して製作されたモデルのようですね。
ベース版もあるようです。
Corvus
1980年代に流布していた「Gibson製ギターは古臭い」というイメージを払拭しようと1982年に発売し、1984年まで生産されたギターです。
アルダー製の特徴的なボディはその独特な形状から「can opener (缶切り)」と呼ばれていました。ネックはメイプル製で、Futuraと呼ばれる上級モデルはセットネック、それ以外はボルトオンという仕様でした。
Ⅰ ・Ⅱ・Ⅲと3つのバリエーションが存在し、Ⅰ がハムバッカーを1基、Ⅱがハムバッカーを2基、Ⅲがシングルコイルを3基搭載しています。
Map
1983年ごろに生産されたギターで、「Map」の名の通りアメリカ型のボディシェイプをしています。
元々は店頭のプロモーションや楽器ショーへの出品のために製作されたギターで、一部エンドース契約を結ぶアーティストへプレゼントもされたとのこと。
Epiphone版も存在したようです。
Alpha
1985〜1992年に生産されていたカスタムショップ製のモデル。
先述のVictoryに似たボディシェイプをしており、Victory同様スーパーストラト市場をターゲットに投入したギターです。
このAlphaには以下の4タイプが存在します。
Q-100
ブリッジ側にダーティーフィンガーズハムバッカーを1つ搭載したモデル。
チューン・オー・マチックが標準装備ですが、オプションとしてケーラー製のトレモロを装着することもできました。(Q-100、Q-80以外はトレモロ標準装備)
Q-200(Q-2000)
フロントにP-90を、リヤにダーティーフィンガーズハムバッカーを搭載したモデル。
Q-300(Q-3000)
P-90を3つ搭載したモデル。
Q-400(Q-4000)
フロントとセンターにシングルコイルのダーティーフィンガーズを、リヤにダーティーフィンガーズハムバッカーを搭載したモデル。
Q-80(Q-90)
Alphaシリーズのベース版で、2基のハムバッカーを搭載したモデル。
M-Ⅲ
1991〜1990年代後半に生産されていたモデル。
特徴的なダブルカッタウェイのボディにエクスプローラーのネックがセットされています。
ピックアップはDirty Fingers+をHSH配列にてマウント。さらにフロイドローズやジャンボフレットの採用など、メタル向けのギターであることがわかります。
2013年に再販されたことも話題となりました。
最後に
今回紹介したギター以外にも、フライングVのボディを180度回転させたボディのリバースフライングVやES-335をソリッドボディ化した335-Sなどなど、Gibsonの珍ギターはたくさん存在します。
中には中古市場に出回っているモデルもあるので、人とはちょっと違うギターやベースが欲しいという方は今回紹介したギターを探してみるのもいいかもしれません。
Fender編はこちら↓