塗装の種類と特徴まとめ

楽器店に足を運んでみると、赤や青、ゴールドなどなど様々な色で塗装されたギターが販売されています。

そんな塗装、様々な色のものが存在するのと同様に、使う塗料や塗装手法には様々な種類があり、どれも異なる性質を持っています。

そこで今回はギターやベースの塗装でよく使われる塗料や手法の特徴を紹介していきます。

 

なぜギターやベースには塗装がされているのか?

ギターやベースが塗装されているのは、「外観の美化」「木材の保護」の2つ理由から。

この2つの役割について解説していきます。

1.外観の美化

ギターやベースはサウンドや演奏性だけでなく、その見た目も重要な要素です。

アコースティックギターは木材本来の色を活かしたナチュラルカラーで塗装されていることが大半ですが、エレキギターやベースにおいては鮮やかなパステルカラーの塗装や美しい木目を活かすシースルー塗装、派手なラメが入ったフレーク塗装など、様々な塗装手法や塗装色が採用されています。

塗装とは関係ありませんが、ネックやボディにLEDを内蔵し、光らせることができるギターやベースも存在します。

 

2.木材の保護

ボディやネックに使用されている木材は基本的に傷がつきやすく、気温や湿度の影響受けやすいデリケートな材です。

そんなデリケートな木材を衝撃や外気から保護するのも塗装の役割の1つ。

特に日本は欧米などと比べると高温多湿な環境なので、塗装の保護能力の恩恵は大きなものです。

 

塗装の種類

「塗装」と一口に行っても様々な塗料や塗装方法がありますが、ギターやベースでは「ラッカー塗装」「ポリ系塗装」「オイルフィニッシュ」の3つの塗装手法がよく使われます。

ラッカー塗装

ラッカー塗装は見た目の鮮やかさと音の良さを両立した塗料です。

一口にラッカー塗装といってもいろいろと種類があるのですが、ギターやベースには「ニトロセルロースラッカー」という塗料が使われることが多いです。

比較的古くから使用されている塗装方法で、ビンテージギターや高級ギターは大抵ラッカーで塗装されています。

発色が良く、独特のツヤを持つ一方で塗装がやや難しく(=コストが高い)、高温多湿に弱いといった特徴があります。

そしてラッカー塗装最大の特徴はなんといってもその塗膜の薄さです。

他の塗装方法と比べて塗膜を薄くできるため、ボディ材やネック材本来の鳴りを殺しにくく、よく鳴るギターになりやすい傾向にあります。

 

ラッカー塗装に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

 

ポリ系塗装

ポリ系塗装はポリエステル塗装とポリウレタン塗装の総称で、比較的最近開発された塗料。発色がよく、丈夫で低コストであるため、近年主流になっている塗装方法です。

ムラが出にくく、乾燥にそれほど時間がかからないため、大量生産に向いています。

一昔前までは安価なギターによく採用されている塗料というイメージでしたが、近年では比較的高価なギターにも採用されるようになってきています。

ラッカー塗装に比べると塗膜が硬く、厚いためサウンド面ではやや不利ですが、その分気温・湿度の変化や衝撃にかなり強くなっています。

 

ポリ系塗装に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。

 

オイルフィニッシュ

オイルフィニッシュは文字通りボディやネックにオイルを塗り込んだ塗装方法です。亜麻仁油や桐油など、植物系の油が使用されます。

音響特性は抜群に良い一方で、傷つきやすく変質も起きやすいデリケートな特性を持っています。

表面に油を塗っているだけなので派手な着色は行うことはできず、木材本来の茶色系の発色となります。

オイルフィニッシュはどんな塗料よりも塗膜(油膜)が薄いため、非常に鳴りが良く、音抜けの良いギターとなりますが、その代償として衝撃や気温・湿度の変化には弱く、取り扱いには注意が必要です。

ちなみにオイルを塗っていますがベタつきはほとんどなく、さらさらとした心地の良い肌触りです。

オイルフィニッシュに関しては以下の記事で詳しく紹介しています。

 

そのほかの塗装

これまで紹介した塗装方法以外にも少数派ですが様々な塗装方法があります。

オイルフィニッシュと似た特性を持ち、バイオリンなどでも使用されるシェラック塗装やヴァーニッシュ塗装、カシューナッツから採れる油を使用し、ラッカー塗装と似た性質をもつカシュー塗装など、様々な塗料が存在します。

これらのレア塗料(塗装)は以下の記事で紹介していますので是非ご覧ください。

 

まとめ

  • 塗装は見た目を良くし、ボディ材やネック材を傷や外気から保護するために行われている
  • ギターやベースにはラッカー塗装、ポリ系塗装、オイルフィニッシュの3つが主に使われる
  • ラッカー塗装は発色が良く塗膜を薄くでき、発色と音のバランスの取れた塗料
  • ポリ系塗装は発色が良く低コスト。塗膜は厚めなので鳴りはラッカーに劣りがち
  • オイルフィニッシュは塗膜(油膜)が極めて薄く、鳴りは非常に良いが、かなりデリケート

 

12弦ギターの魅力とは!?

7弦ギターなどと並んで多弦ギターの代表格とも言えるのが12弦ギターです。

レッド・ツェッペリンの「天国への階段」やイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」などで使用されていることでもお馴染みのギターで、6弦ギターにはない豊かな響きでアンサンブルに彩りを加えることができます。

今回はそんな12弦ギターの歴史や特徴に迫っていきたいと思います。

 

12弦ギターとは?

12弦ギターは6弦ギターの弦(主弦)にオクターブ上または同音の弦(副弦)を追加したギターです。

アコースティックギターがほとんどで、12弦のエレキギターは少数派です。

12弦ギターは隣り合う2本の弦が隣接した形で配置されており、2つの弦を同時に押弦・ピッキングして音を出します。

各弦の太い方(1弦側)を主弦、もう片方(6弦側)を副弦、と呼びます。

 

チューニングは6弦ギター同様「E-A-D-G-B-E」となりますが、弦は12本あるので実際には「E-E-A-A-D-D-G-G-B-B-E-E」といったチューニングになります。

主弦は6弦ギター同様のチューニングで、副弦は6弦から3弦は主弦よりも1オクターブ高い音、2弦と1弦は主弦と同じ音でチューニングします。

 

12弦ギターは隣り合う2つの弦をまとめて押さえる、といった違いがあるだけで、演奏方法や音域は一般的な6弦ギターとほぼ同一です。

 

12弦ギターのサウンド

12弦ギターのサウンドは「きらびやかで広がりのある音」や「豊かな響き」などと形容されます。

独特の音を生み出す秘密は「主弦と副弦の音程のズレ」です。

主弦と副弦を同じ音でチューニングしたとしても、主弦と副弦の間にはわずかな音程のズレが生じます。

この「ズレ」によってコーラスをかけたような美しい響きを得ることができます。

6弦ギターでもオクターバーやコーラスを使うことによって似たような雰囲気を出すことができますが、やはり倍音の美しさや音の広がりは12弦ギターにはかないません。

ストロークで演奏するのはもちろん、開放弦の響きもとても良いため開放弦を活かしたアルペジオで使用されることが多くあります。

 

12弦ギターの歴史

12弦アコースティックギターは19世紀の終わり頃に誕生しました。

正確な起源は不明ですが、メキシコの民族楽器であるバンドロンやギタラ・セプティマなどの多弦楽器がルーツであるという説が有力なようです。

誕生当初はほとんど普及せず、イロモノ扱いを受けていましたが、1950年代になるとレッドベリー氏やブラインド・ウィリー・マクテル氏などの著名なミュージシャンが使用したことで徐々に普及し始めます。

そして1960年代になると12弦エレキギターの登場も相まって、アコースティック・エレキ共に12弦ギターは多くのギタリストに支持されるようになりました。

1960年代後半になるとその人気は一旦衰えてしまいますが、1970年代になるとレッド・ツェッペリンやイーグルスなど著名なバンドが使用したことから再び人気を集め、多弦ギターの代表格としての地位を築いていきました。

 

12弦ギターのメリット

豊かな響きを得ることができる

先述の通り12弦ギターは単音弾きでもコーラスをかけたような豊かな響きを得ることができます。

開放弦やアルペジオなどを活かしたフレーズは12弦ギターにしか出せない独特の魅力があります。

この「豊かな響き」こそが12弦ギター最大の魅力です。

 

ステージ映えする

モデルにもよりますが、12弦ギターはゴージャスなデザインのものが多く、12個並んだペグは迫力があります。

使っている人が少ないことも相まって、ステージでは目立つ存在となります。

 

12弦ギターのデメリット

弾きこなすのに多少の慣れが必要

これはデメリットというほどのことではないかもしれませんが、12弦ギターは一度に2本の弦を押さえることになるため、綺麗な音を出すには多少の慣れが必要となります。

また、ネックが太いため弾きづらいと感じることもあるかもしれませんが、基本は6弦のものと大差ないためすぐにマスターすることができるでしょう。

ただ、2本の弦を一度に抑える特性上チョーキングはほとんどできません。

個体数が少なく、価格が高め

12弦ギターは大型の楽器店でも数本しか取り扱いがない、なんてことはザラにあります。

個人的な印象ですが12弦ギターは左利き用ギターくらいレアな存在のように思えます。

このため弾き比べて購入する、といったことが難しく、選択肢が限られてしまいます。

また、需要が少ないことから価格も高くなりがちで、6弦ギターと比べるとコストパフォーマンスはあまり良くありません。

弦交換やメンテナンスが大変

当然ですが、弦の数が倍になっているため弦交換の手間も倍かかります。

特に6弦から3弦は1オクターブ高い弦が張られており、かなり細く切れやすいため交換には注意が必要です。

また、本体同様12弦ギター用の弦は実店舗での取り扱いが少ないため選択肢があまりありません。

弦以外にもブリッジやナットといった弦が直接触れるパーツは特殊なものが使用されているので交換部品の選択肢も限られ、メンテナンスの工賃も高くなりがちです。

 

まとめ

  • 12弦ギターは6弦ギターの弦にオクターブ違い、または同音の副弦を追加したギター
  • コーラスをかけたような煌びやかな倍音や豊かな響きが特徴
  • チューニングや奏法は6弦ギターと同じ
  • 19世紀の終わり頃に誕生し、1960年代以降に普及した
  • メキシコの民族楽器がルーツと言われている
  • 個体数が少なく、価格は高め

正直なところ12弦ギターは6弦ギターと比べると入手性や演奏性、メンテナンス性など、デメリットの方が多いように感じます。

しかしそのサウンドというのは唯一無二であり、多くのデメリットを背負ってでも手に入れたくなるようなギターと言えます。

気になる方はYouTubeなどの動画だけでなく、実際に楽器店に足を運んで試してみるのがおすすめです。

 

 

ペグの種類や構造をまとめてみた

ギターのチューニングを行う際の要となるパーツが「ペグ」です。チューナーや糸巻きとも呼ばれていますね。

ギターだけでなくバイオリンやコントラバスなどといった弦楽器には必ずついているパーツですが、ペグについて気にしたことのある方は意外と少ないのではないでしょうか。

弦が直接巻きつけてあるので音への影響も少なからずありそうですよね。

そこで今回は「ペグ」にスポットを当て、構造や種類について解説していきます。 

 

ペグの構造

一般的なペグは内部をホコリなどから守ったり見た目を良くしたりするためカバーで覆われているためなかなか内部構造を見ることができませんよね。

モデルによってはカバーのついていないものもあるので、今回はそちらの写真を参考に内部構造を見ていきましょう。

ペグには「ウォームギヤ」と呼ばれる機構が採用されています。

ウォームギヤはギターやベースのペグだけでなくコントラバスなどの弦楽器にも使用されており、楽器以外の分野では自動車のステアリング機構やオルゴールなどにも使われています。

ウォームギヤはネジのようになっている「ウォーム」と歯車形状をしている「ウォームホイール」の2つで構成されています。

ウォームギヤには以下のような特徴があります。

  • 減速比が大きく、シビアな調節が可能
  • 伝達が滑らかであるためスムーズなチューニングが可能
  • ウォームホイールからウォームへは回せない(セルフロック)ため、弦の張力によってポストが回ってチューニングが狂うことがない

 

こうして見るとウォームギヤはギターやベースの調弦にはぴったりの性質を持った機構と言えますね。

 

ペグの種類と音へ与える影響

クルーソンタイプ

KLUSON / 3+3 - PEARL SINGLE RING - SINGLE LINE Nickel

ギヤを覆うケースが鉄板をプレスしたもので作られているのがクルーソンタイプのベグです。

ストラトキャスターをはじめとしたフェンダー系ギターに多く採用されており、1940年代にクルーソン社によって発売されたものが発祥です。

比較的軽量であるためギター本来の鳴りをスポイルしにくく、ビンテージ感ある音となる傾向にあります。

ロトマチックタイプ

GROVER ( グローバー ) / 102NV

ギヤを覆うケースがダイキャスト(鋳造)で作られているものがロトマチックペグです。1950年代にグローバー社が発売したペグがルーツとなっています。

ギブソン系ギターに多く採用されており、クルーソンタイプと比べるとゴツいフォルムをしています。

クルーソンタイプと比べると重量があるためサスティーンが良くなり、モダンな音となる傾向にあります。

ロック式ペグ(ロッキングペグ)

SPERZEL ( スパーゼル ) / Trim-Lok 6-in-line Locking Guitar Tuners Nickel

古くから使われてきたペグはペグポストに弦を巻きつけることによって固定していますが、ロック式ペグは弦をネジなどで固定することによって弦を保持するペグのことです。

ロック式ペグはチューニングが狂いにくくなったり弦交換が楽になったりと良いことづくめ。

構造が複雑であるため従来のものよりもやや壊れやすいといったデメリットもありますが、登場以来人気を博している新世代のペグです。

オートチューニングペグ

弦をジャラーンと鳴らすだけで自動でチューニングを行ってくれるペグです。

ペグ内部にはチューナーとモーターが搭載されており、それらを制御する基盤も搭載されています。このため6つのペグは独立しておらず、1つのユニットとして構成されています。

以前ギブソンから「G-Force」と呼ばれる自動チューニングシステムを搭載したギターが販売されていましたが、現在では後付けできるオートチューニングペグも販売されています。

 

ペグの消耗と交換

ペグは弦の張力やギヤの擦れなどによって徐々に磨耗していきます。

通常ペグは10年前後は持ちますが、摩耗が進むとガタが大きくなったり、回した感触が固くなるもしくはゆるゆるになるといった症状が出たりしてチューニングを合わせづらくなってきます。

こうした場合はペグの交換が必要となってきますが、ペグを固定しているボルトやナット、ツマミの横のネジが緩んでいることが不調の原因である場合もありますので交換する前に確認してみましょう。

 

また、ペグの交換はメンテナンス性を向上させたり音を変化させたりすることもできるため、おすすめの改造のひとつでもあります。

基本的に同じタイプのペグであればボルトやナットを外すだけで交換できますが、購入の際は念のため互換性を確認しておきましょう。

クルーソンタイプとロトマチックタイプはポストの径や固定ネジの位置が違うためヘッドを加工しないと取り付けられないため注意しましょう。

また、同一タイプのペグでもメーカーによって微妙にサイズが合わない、なんてこともありますのでわからない場合は楽器店やリペアショップに相談してみましょう。

 

おすすめペグメーカー

交換用のペグはフェンダーやギブソンからも発売されていますが、有名メーカーにパーツを供給しているパーツメーカーからも販売されています。

その中からおすすめのペグメーカーをいくつか紹介しますので参考にしてみてください。

GROVER(グローバー)

グローバーはアメリカのパーツメーカーで、創業は1922年と100年にわたってペグを作り続けている老舗。主にロトマチックタイプのペグを作っています。

ギブソンやエピフォン、マーチンなどのペグはグローバー製であることが多いです。

アメリカの企業らしく、他社にはない派手なデザインのペグも製造しています。

KLUSON(クルーソン)

クルーソンはアメリカで1925年に創業したブランドで、その名の通りクルーソンタイプのペグのルーツとなったブランドです。

グローバー同様歴史ある会社ですが、1980年代初頭に倒産しています。

現在ではアメリカのWD社がライセンスを取得した上で当時のデザインを復刻した高品質なクルーソンペグを販売しています。

GOTOH(ゴトー)

GOTOHは群馬県に本社を置く弦楽器パーツの専門メーカー、後藤ガット有限会社のブランドです。

国内外のメーカーの純正ペグにも数多く採用されており、その品質は折り紙付き。ラインナップが豊富なのもGOTOHの特徴です。

また、他社と比べてもお手頃な価格設定なのも魅力的です。

SCHALLER(シャーラー)

シャーラーはドイツに拠点を置くギターパーツメーカーです。シャーラーのペグも数多くのメーカーに純正パーツとして採用されています。

ロック式のストラップピンを初めて販売したメーカーとしても有名ですね。

ものづくり大国ドイツの製品らしく加工精度は非常に優秀で、ペグに求められる機能や性能全てが高いレベルで仕上げられています。

 

 

縁の下の力持ち!? 〜ポジションマークのヒミツ〜

ギターを弾く上で重要な役割を担っているのが、指板やネックの側面に配置されたポジションマークです。

ギターやベースを弾く際になくてはならないものですが、「何でできているのか」とか「なぜあの位置についているのか」など意外と謎が多い存在だったりします。

今回はないと困るけど地味な(?)存在、ポジションマークについて深掘りしていきます。

 

ポジションマークの位置と役割

基本的にポジションマークは3フレット、5フレット、7フレット、9フレット、12フレット、15フレット、17フレット、19フレット、21フレット、24フレットについています。(ギターにもよって異なる場合もあります)

指板上だけでなく、ネックの6弦側の側面にもついていますよね。

12フレットや24フレットは開放弦からちょうど1オクターブまたは2オクターブ高い音となっているため、他のポジションマークとは異なるデザインの場合が多いです。

 

ポジションマークの役割は主に「視認性の向上」と「デザイン性の向上」の2つ。

まず「視認性の向上」についてですが、ポジションマークがないとフレットの位置を瞬時に把握できなかったり、大きなフレット移動がある際に目的のフレットへのスムーズな移動ができなかったりと演奏ミスに直結してしまいます。

このためフレット位置を示すポジションマークは非常に大切であることがわかります。

また、意識して見ることはあまりないですが、ポジションマークにはギターやベース全体のデザインを引き締める役割もあります。これが2つ目の「デザイン性の向上」です。

ドット型やスクエア型が一般的ですが、高級なギターになるとまるで工芸品のような美しいポジションマークがかたどられていることもあります。

 

なぜポジションマークはあの位置なのか?

ポジションマークのついている位置は先述の通りですが、なぜどのギターやベースもこの位置についているのでしょうか。

 

実はなぜポジションマークがあの位置についているのかと言った明確な理由はわかっていません。

そこで今回はいくつかある説の中でも有力なものを紹介します。

1.弦の長さを等分した位置についている説

ギターのナットからブリッジのコマまでの距離を1としたときの2分の1、3分の1、4分の1、にあたるところからポジションマークをつけたのではないか、という説です。

上の画像を見ると、ナットからブリッジまでの距離を1としたときにちょうど半分(1/2)の長さになるのが12フレット、1/3が7フレット、1/4の位置が5フレット、というのがわかります。ちょうどポジションマークが打たれているフレットですね。

5フレットと7フレットを基準として1フレットおきに他のフレットにもマークを打っていった、ということです。

12フレット以降はオクターブ上となるので12フレットを0フレット(開放弦の音)と換算し、15フレット、17フレット...と言った具合で打たれています。

2.ただ単に奇数フレットにつけた説

単純に1フレットから1個飛ばしで3、5、7、9...といった感じで付けただけ、と言う説です。

ネックを眺めてみると、ほとんどのポジションマークは奇数フレットについていることがわかります。(12フレットや24フレットは先述の理由により例外的に偶数フレットについていますが)

1フレットにポジションマークがついていないのはナットのすぐ横であり、フレット位置が瞬時にわかるため付いていないことがほとんどです。

 

ポジションマークの材質

ギター本体が様々な木材が使われているように、ポジションマークも様々な材質が使われています。

プラスチック

一口にプラスチック、と言ってもいろいろありますが、ポジションマーク材としてよく使われるのがセルロイドです。ピックなどにも使われていることでお馴染みの素材ですね。

物によってはパールっぽく見せるために模様が入っていることもあります。

パール

貝から採れる宝石の一種。ネックレスやピアスなどにも使われていますよね。

高級ギターでは一般的な素材で、決して派手ではありませんが気品があるため人気の素材です。

アバロン

アバロン貝(ホタテ)から採れる宝石の一種。

青や赤、緑など様々な色が混ざった虹色の輝きを放っており、ポジションマークに使われる素材の中ではかなり派手な色味が特徴です。

LED

発光ダイオードをポジションマーク部に埋め込んだギターやベースも存在します。

電源が必要となったり、重くなったりといったデメリットはありますが、ステージ映えは抜群。

 

ポジションマークの交換は可能?

結論から言うと「可能」です。

しかしポジションマークは指板に空いた穴にはめ込まれ、接着されているので個人で交換するには難易度の高い作業になります。

このため工房に依頼するのが賢明ですが、ポジションマークを外して、接着剤を剥いで、新しいポジションマークを取り付けて滑らかになるように加工して...と言ったように時間も手間もかかる作業となります。

このため工賃は高めで、形状にもよりますがおおよそ2万円以上かかります。

お金も時間もかかる作業ではありますが、オリジナリティを出したい場合は検討してみてもいいかもしれませんね。

 

ポジションマークの材質や形状で音は変わる?

ポジションマークには様々な形状や材質がありますが、やはり気になるのが出音への影響です。

小さめのポジションマークだとそれほど気になりませんが、レスポールのようにマークの面積が大きめだとなんだか出音へ影響が出そうですよね。

しかし、ポジションマークが出音へ与える影響はほとんどありません。

もちろん厳密にいえば微妙にサウンドを変化させてはいますが、ギターやベースのサウンドを決定づけているのはボディ材やピックアップなどであり、ポジションマークの形状や材質が変わったところで大した変化はありません。

また、ポジションマークのみが違うギターはほぼ販売されていませんので比べようにも比べられません。

 

「このギターはポジションマークが大きめだから音が悪い」とか「ポジションマークがない(小さい)から音がいい」なんてことはないので、気にせず好きなギターやベースを選びましょう。

 

まとめ

  • ポジションマークは3フレット、5フレット、7フレット、9フレット、12フレット、15フレット、17フレット、19フレット、21フレット、24フレットについている
  • フレットの視認性とデザイン性を高める役割を持つ
  • なぜポジションマークがあの位置についているかの正確な理由は不明だが、「弦の長さを等分した位置についている」、「奇数フレットにつけた」などの説が有力
  • プラスチックや貝などで作られている
  • 材質や形状の違いによる音への影響はほとんどない

 

演奏する際にポジションマークについて考えることはあまりないかと思いますが、知っていくと意外と奥が深いものですね。

ギターやベースを選ぶ際にはポジションマークにも目を向けてみても面白いかもしれません。

 

 

【5分でわかる!】PRS Custom(カスタム)の特徴

フェンダー、ギブソンに次ぐ第三勢力として近年人気を集めているメーカー、ポールリードスミス(PRS)。

創業は1985年と比較的若い企業ですが、その人気はフェンダーやギブソンに勝るとも劣りません。

そんなPRS社を代表するギターが「Custom(カスタム)」です。単にカスタムと呼ばれることより「Custom24」とか「Custom22」なんて呼ばれたりすることの方が多いギターですね。

今回はそんなPRS Customの歴史や特徴に迫っていきます。

 

歴史

Customはポールリードスミス社が設立した1985年当初からラインナップされているギターです。

創始者のポール・リード・スミス氏が自宅で手作りしていたギターがCustomのルーツとなっています。

自身や知り合いのミュージシャンにとって最高のギターを作るため、ポール氏は何十本もの試作品を製作し、改良に改良を重ねた末にCustomは現在の形となりました。

その後ポール氏はCustomをカルロス・サンタナ氏やテッド・ニュージェント氏に直接売り込みに行き、見事使ってもらうことに成功。

こうしてCustomはPRSの名前とともに世界中のギタリストの憧れの的となっていきました。

 

サウンド

Customは「レスポールとストラトのいいとこ取りをしたようなギター」と称されます。

数十回もの改良によって生まれたサウンドは、やや中域の出た素直でクリアなサウンド。ノイズが出やすかったり音が潰れてしまったり、なんてことはほとんどありません。

あまりにも優等生すぎるため「個性のない音」と言われてしまうこともありますが、エフェクターやアンプ、ひいては弾き手の技量の個性を引き出すのにはもってこいのギターです。

コイルタップ機能(ハムバッカーとシングルコイルの切り替え機能)も備わっているため、ジャンルに縛られない多彩な音作りが可能となっています。

 

構造

ボディ

ボディはトップ材にメイプル、バック材にマホガニーを使用しており、ボディトップは「カーヴィング」と呼ばれるアーチトップ加工が施されています。この辺りはレスポールと似ていますね。

ボディシェイプは道具としての機能性と工芸品のような美しさを兼ね備えたシェイプをしています。

また、木目や塗装の美しさもPRS製ギターの特徴で、10本に1本程度しか現れない美しい木目の「10top」と呼ばれるモデルも用意されています。

ネック、指板

ネックはマホガニー製で、指板はローズウッド。モデルによっては指板にメイプルやブラジリアンローズウッドを採用したものもあります。

薄く、幅が広いネックシェイプをしており、手の小さな方でも弾きやすいよう仕上げられています。

スケールは25インチ。ギブソン系ギターに多いミディアムスケールとフェンダー系ギターの多いロングスケールの中間くらいのスケールとなっています。

フレット数は2種類から選択でき、22フレットモデルの「Custom 22」と24フレットモデルの「Custom24」とがあります。この2つはフレット以外にもピックアップの位置も若干違うため、サウンド特性も少し異なります。

また、ポジションマークは様々な鳥のシルエットをあしらったバードインレイや月の満ち欠けを表現したムーンインレイがあしらわれています。

ヘッド、ペグ

photo credit: Freebird_71 PRS SE Custom 24 30th. Anniv. AT via photopin (license)

ヘッドの形状もCustomを語る上では欠かせない特徴のひとつ。

弦の鳴りを妨げないようナットの溝からペグまで弦ができるだけ一直線になるようにデザインされています。

オリジナルのロッキングチューナーを採用しているのも見逃せません。(写真はSEのためロッキングチューナーは搭載されていません)

ピックアップ

ピックアップはPRSが開発したオリジナルのハムバッカーを搭載しています。Custom22にはシングルコイル搭載のモデルもラインナップされています。

22フレットと24フレットモデルで異なるピックアップを採用しており、数年周期でマイナーチェンジされています。

トーンノブを押したり引いたりすることでハムバッカーとシングルコイルを切り替えられるコイルタップ機能が備わっているのも特徴です。

ピエゾピックアップを搭載したモデルも存在します。

ブリッジ

ブリッジもPRSオリジナル。

構造的にはストラトキャスターのシンクロナイズドトレモロと似ていますが、細かな部分がブラッシュアップされており、スムーズなアーミングやチューニングの安定性、サスティーンの向上に寄与しています。

また、フロイドローズを搭載したモデルもラインナップされています。

 

いろいろなCustom

実は「Custom」にはいくつかシリーズがあり、予算やプレイスタイルにあった選択が可能となっいます。

Custom(通常モデル)

「コアモデル」なんて呼ばれることもあります。Customシリーズ最高峰かつPRS社の看板モデルです。

PRSが拠点を置くアメリカで製造されています。

どのモデルも30万円以上と高額ですが、その価格に見合った美しく高品質なギターであるため世界中のギタリストの憧れとなっています。

Custom S2

Customよりもお手頃な価格で入手できるのが「Custom S2」です。価格は15万円くらいから。

価格は通常モデルに比べると安いものの、使用されている木材や生産工場は通常モデルと同一。

価格を下げるためにハードウェアやピックアップ、カーヴィングの形状などが見直されていますが、そこに妥協は見られません。

また、通常のCustomにはない珍しい仕様のモデルがラインナップされているのもS2シリーズの魅力のひとつです。

Custom CE

S2の先代にあたるシリーズで、「CE」は「Classic Electric」の略。

基本構造はコアモデルと同一ですが、ネックジョイントをボルトオン方式にしたりボディ形状を見直すことによってコストダウンを図っています。

2009年に生産終了となりましたが、限定モデルとしてたびたび復活しています。

SE Custom

SEは「Student Edition(学生向けモデル)」の略称。その名の通りPRSのギターの中では最も安価で手に入ります。

このシリーズのみアメリカではなく韓国の提携工場で生産されています。

生産国は違えど基本的な構造やデザインはUSA製Customと同じであるため、最もコストパフォーマンスに優れたシリーズであるといえます。

 

 

【5分でわかる!】ギブソン ファイヤーバードの特徴

photo credit: Freebird_71 2009 Gibson Firebird via photopin (license)

ミニハムバッカーを搭載していたり、スルーネックを採用していたりとギブソン製ギターの中では独特の構造を持つギター、ファイヤーバード。

ジョニー・ウインター氏やローリング・ストーンズのロン・ウッド氏が使っていることでお馴染みのギターですね。

今回はそんなギブソン・ファイヤーバードの歴史や構造について紹介していきます。

 

歴史

ファイヤーバードは1963年に登場したギターです。

当時ギブソンはストラトキャスターをはじめとしたフェンダー製ギターの人気に押されており、これに対抗する形でフライングVやエクスプローラーなどをリリースしましたが、なかなか市場の支持を得られていませんでした。

そんな中次なる一手としてギブソンがこの世に送り出したのがファイヤーバードです。

自動車のデザイナーであったレイ・ディートリッヒ氏がデザインしたボディや新開発のミニハムバッカー、ギブソン初のスルーネックの採用など、かなり力の入ったモデルでした。

発売以降も小規模な変更を繰り返しながら進化していったファイヤーバードですが、1966年に大幅なモデルチェンジを敢行。ボディを左右反転させたような形状とし、スルーネックからジョイントネックへ変更するなどしました。このファイヤーバードは「ノンリバースモデル」とも呼ばれています。

かなり気合の入った開発が行われたファイヤーバードでしたが、売り上げが低迷していたため1969年には生産を終了してしまいます。

レギュラーラインからは姿を消したものの、のちに限定モデルとして再生産されたり、後継機であるファイヤーバードⅡがごく少量ですが登場したりと完全に姿を消すことはありませんでした。

そして1990年、ついにレギュラーラインナップとして復活を果たし、現在に至るまで細かな仕様変更を行いながら生産が続けられています。

 

サウンド

高域に特徴のある歯切れの良いギターといった印象ですが、シングルコイルほど高域の主張は強くなく、程よいパワーがあるため扱いやすいサウンドとなっています。

ちなみにノンリバースモデルはリバーズモデルと比べると低域がよく出る傾向にあります。

レスポールほどマッチョではなく、ストラトキャスターほど繊細ではないちょうどいい塩梅のサウンドはどんなジャンルにも使えるオールマイティーなギターと言えますね。

 

構造

ボディ

ボディはマホガニー製。ファイヤーバードの多くはスルーネック構造であるため、ボディ材はネック材の両端に張り付けられるような形となっています。スルーネックの場合、ボディ材は「ウイング材」と呼ばれることもあります。

ファイヤーバードには1弦側のホーンが長い「リバースモデル」と6弦側のホーンが長い「ノンリバースモデル」の2種類のボディ形状が存在します。

世間一般的にはギブソンのファイヤーバードといえばリバースモデルのことを指しますが、ノンリバーズモデルも高い人気を誇っています。

ネック・指板

ネックもボディ同様マホガニー製で、ボディエンドまでネック材が伸びたスルーネック構造を採用しています。(一部セットネック構造のモデルもあります)

スルーネック構造はネックジョイント部がなくなることによってハイポジションの演奏性が向上したり、サスティーンの伸びが良くなったりといったメリットがあります。

モデルによってはペグも特殊で、バンジョーのペグのようなギヤのないものが採用されています。

指板はギブソンお得意のローズウッドで、ポジションマークはレスポールのようなブロックインレイやドット型インレイが採用されています。

ピックアップ

ピックアップは専用開発のミニサイズハムバッカーが採用されています。(通称「ミニハム」)

ミニハムバッカーは通常のハムバッカーと比べるとコイルの巻数が少なく、磁力も強くないためシングルコイルよりのブライトで歯切れの良いサウンドが特徴です。

ノンリバースモデルなど一部のモデルにはP-90がマウントされています。

ブリッジ

現行のファイヤーバードのブリッジはチューン・O・マチック+ストップバーテールピースの組み合わせですが、ビンテージの個体はマエストロ・ヴァイブローラと呼ばれるビブラートユニットが搭載されたモデルが一般的。

マエストロ・ヴァイブローラは板バネ式のビブラートユニットで、SGにも搭載されていることでお馴染みですね。

音程の可変量は小さいものの、ゴージャスな見た目となったり、ブライトなサウンドとなったりすることから人気を博しているビブラートユニットです。

 

いろいろなファイヤーバード

ファイヤーバードⅠ

ファイヤーバード発売当初にラインナップされていたモデルで、レスポールやSGでいうところの「ジュニア」に相当するモデルです。

ピックアップはミニハムバッカーがリヤにのみ搭載され、テールピースとブリッジを一体化したライトニングバーブリッジを採用。そのほかにもバインディングを廃していたりポジションマークをドット型にしたりと、徹底的なコストダウンが図られています。

安いから音はイマイチ、なんてことはなく、クリーム時代のエリック・クラプトン氏も愛用していたことから、価格だけでは語れない魅力的なギターであるといえますね。

ファイヤーバードⅢ

「スペシャル」に相当するモデル。

フロントピックアップやバインディングが追加され、それに合わせてコントロールも2ボリューム・トーンとなっています。ショートヴァイブローラが搭載されているのもこのモデルの特徴です。

ビンテージのファイヤーバードの中で最も個体数が多く、中古市場でもよく見かけます。

ファイヤーバードⅤ

「スタンダード」に相当するモデルです。現行のファイヤーバードはこのモデルをベースにリイシューされています。

電気系統の仕様はⅢと同一ですが、レスポールのようなブロックインレイがおごられ、見た目も豪華なデラックス・ヴァイブローラー(ロング・ヴァイブローラ)も搭載されています。(動画のモデルには搭載されていません)

また、オクターブ調整が可能なチューン・O・マチックもこのグレードから搭載されるようになります。

ファイヤーバードⅦ

シリーズ最上位機種、「カスタム」に相当するモデルです。

3ピックアップにデラックスヴァイブローラ、ゴールドハードウェアなど、最上位を謳うだけあってかなり豪華な仕様となっています。

生産本数は300本程度と非常にレアなモデル。

ファイヤーバードⅡ

1982年にごく少量生産されたファイヤーバードです。

ボディシェイプは通常のファイヤーバードとは微妙に異なっており、ピックアップも通常サイズのハムバッカーが搭載されています。

内部には1970年代に生産されていたRD Artistのアクティブ回路が搭載されており、イコライザーやコンプレッサーをギター側でかけることができるハイテクなファイヤーバードなのです。

ファイヤーバードX

2011年に発売されたモデル。

ノンリバースのボディに3機のミニハムバッカーやマルチエフェクター、自動チューニングなどギブソンが持つハイテク技術を詰め込んだギターです。

ほかにもBluetoothでコントロールできたりピエゾピックアップも内蔵していたりと超多機能なギターでしたが、価格は約60万円と高額であったためかほとんど売れなかったそうです。

 

 

【5分でわかる!】フェンダー ムスタングの特徴

数あるフェンダー製ギターの中でも異端児ともいえるのが、ムスタングです。

日本ではChar氏が使用していることでお馴染みですが、特殊な機構によって生み出されるじゃじゃ馬なサウンドは熱狂的なファンの多いギターです。

今回はそんなムスタングの歴史や特徴を紹介していきます。

 

歴史

ムスタングは1964年にスチューデントモデル(入門向けモデル)として発売されました。

それまでにもフェンダーにはミュージックマスターやデュオソニックといった入門向けモデルがありましたが、新開発のトレモロや配線の見直しを行った進化版としてムスタングは登場しました。

その後1966年にはムスタングベースが発売され、1968年にはレーシング・ストライプの入ったコンペティションムスタングも発売されました。

発売当初はそこそこ人気のあったムスタングでしたが同社のストラトキャスターやテレキャスターの人気に押されてしまう形で徐々に販売数を落としていき、1982年には生産中止となってしまいました。

 

しかし1980年代後半に差し掛かるとChar氏の影響もあってか1986年にフェンダージャパンから復刻、1990年からはフェンダーUSAのラインナップにも並ぶようになりました。

以来ムスタングはグランジやパンクロックをはじめとした世界中のギタリストに愛されるギターとなっています。

 

サウンド

ピックアップの出力が弱く、ボディが小ぶりであるため高域寄りのサウンドとなります。

ピックアップやビブラートユニットが持つ特性によって暴れやすいサウンドとなりがちですが、そのじゃじゃ馬っぷりもムスタングの魅力のひとつ。

構造上サスティーンは少なめなのでリードというよりかはバッキングやカッティング向きのギターです。

 

構造

ボディ

ボディ材はアルダーやアッシュが一般的。近年のモデルにはポプラやバスウッドも使用されています。

ボディ形状は先代のミュージックマスターをベースとしており、ジャズマスターのようなオフセットウエストに浅めのカッタウェイ部が特徴。

ストラトキャスターなどと比べると細長く軽量であるため取り回しの良いボディであるといえます。

発売当初はストラトのようなコンター加工は施されていませんでしたが、コンペティションムスタングが追加された1969年以降のモデルにはコンター加工が施されています。

ネック・指板

ネック材は全てのモデルでメイプルを採用しており、指板はローズウッドとメイプルの2種類。

ショートスケールであるため、手の小さな方でも演奏しやすくなっています。

発売当初は22.5インチスケールで21フレットのモデルと24インチスケールで22フレットのモデルとがありましたが、前者は全く人気がなかったためしばらくすると姿を消しました。

ヘッドはストラトキャスターのラージヘッドとほぼ同じ形状で、ポジションマークはドット型です。

ブリッジ

ムスタングには「ダイナミックトレモロ」と呼ばれる専用設計のビブラートユニットが搭載されています。

これはジャズマスターやジャガーに搭載されているフローティングトレモロの発展形ともいえる構造をしており、フローティングトレモロの弱点であった可変量の少なさを克服したビブラートユニットです。

しかし可変域が大きくなった代償としてチューニングが狂いやすいというデメリットを抱えています。

ピックアップ

ピックアップもムスタング専用設計のものが搭載されています。

フェンダー製ギターでは珍しくボールピースまでカバーで覆われた構造をしており、フロント・リヤともに斜めに取り付けられています。

スイッチ

ムスタングのコントロール系統は少し特殊です。

①フロントピックアップON/OFFスイッチ

フロントピックアップのオン、オフを切り替えるスイッチです。

ストラトキャスターやレスポールなどのようにレバーを倒してピックアップを切り替えるタイプではなく、それぞれのピックアップに独立したスライド式のスイッチがついています。

このスイッチは3WAYとなっており、真ん中にするとオフ、両側どちらかに切り替えるとオン、といった感じで切り替わります。

②リヤピックアップON/OFFスイッチ

リヤピックアップのオン、オフを切り替えるスイッチです。

このスイッチもフロント同様3WAYのスライド式スイッチとなっています。

フェイズアウト機能(アウトオブフェイズ)

フロントピックアップスイッチとリヤピックアップスイッチが同じ向き(ブリッジ側−ブリッジ側もしくはネック側−ネック側)になっている場合、2つのピックアップを直列に繋いだ「フェイズアウト」と呼ばれる回路構成になります。

フェイズアウトが有効になると、低域が削られ中域や高域に偏った音となります。(鼻が詰まったようなサウンド、とも形容されます)

2つのスイッチを逆向き(ブリッジ側−ネック側もしくはネック側−ブリッジ側)にすると、2つのピックアップをミックスした回路(フェイズイン)となります。

③マスターボリューム

前後ピックアップのボリュームを調整するノブです。

④マスタートーン

前後ピックアップのトーンを調整するノブです。

 

名前の由来

ムスタングはアメリカの自動車メーカーであるフォード社が製造しているスポーツカー、マスタングに由来します。フェンダーの創始者であるレオ・フェンダー氏が車好きであったこともあり、このような名前がつけられました。

ちなみにコンペティションムスタングに入っているストライプもマスタングをイメージしたものだそうです。

 

 

【5分でわかる!】ギブソン エクスプローラーの特徴

ギブソン・フライングVと並んで変形ギターの代名詞ともいえるギターがエクスプローラーです。

メタリカのジェームズ・ヘットフィールド氏やチープ・トリックのニック・ニールセン氏などが使用していることでお馴染みのギターで、ハードロックやヘヴィメタルで使用されることの多いギターです。

今回はそんなエクスプローラーの歴史や特徴に迫っていきます。

 

歴史

エクスプローラーはフライングVとともに1958年に登場しました。

発売当初は「フィーチュラ」という名前でしたが、すぐにエクスプローラーへと変更されています。

1950年代後半のギブソン社はフェンダー社の勢いに押され気味で、世間から「ジャズギターを作っている地味な会社」といったイメージを抱かれつつありました。

こうした状況を打開すべくエクスプローラーは開発されましたが、逆に奇抜すぎて全く売れず、1963年には生産を中止してしまいます。

発売開始から生産中止までに生産されたエクスプローラーはわずか80本ほど。この間に生産されたエクスプローラーは超プレミア品で、日本円にして2500万円以上の価格がついています。

 

売れなさすぎて生産を終了したエクスプローラーですが、ハードロックやメタルが流行りつつあった1975年には生産が再開。世界中のHR/HM系ギタリストに愛されるギターとなっていきました。

「早すぎた先駆者」といった言葉がぴったりなギターと言えますね。

 

サウンド

ハイパワーなハムバッカーが搭載されているため、ギブソンらしい中低域に特徴のある図太いサウンドとなる傾向にあります。

またボディサイズが大きいため比較的鳴りも良く、サスティーンも必要十分。

激しい歪みはもちろんのこと、クリーンやクランチでもその存在感を発揮します。

 

構造

ボディ

ボディは初期モデルがコリーナ製、現行モデルはマホガニーやメイプルで作られています。

ギブソン傘下のエピフォンでは稀にコリーナボディのエクスプローラーが販売されることもあります。

平行四辺形を引っ張って伸ばしたような独特のシェイプは現代においてもインパクト抜群。

見た目は奇抜なものの厚みはないため軽量でバランスが良く、ハイポジションの演奏性も高い優等生なボディを持っています。

ネック・指板

ネックはボディ同様初期モデルはコリーナ、現行モデルはマホガニー製。指板は発売当初から一貫してローズウッドです。

ヘッドはギブソン伝統のヘッドストックではなく、片側6連ペグの専用デザイン。その形状から「バナナヘッド」や「ホッケースティック」とも呼ばれます。

最初期のモデルは両側に3つずつペグを配置したV字型のスプリットヘッドでしたが、数ヶ月足らずで現在の形状へと変更されています。

ピックアップ

エクスプローラーのピックアップはハムバッカーが基本で、レスポールやSGのようにP-90を搭載したモデルはありません。

ハードロックやメタルに使用されることが多いため、パワーのあるピックアップが搭載されているモデルが多い印象です。

ブリッジ

ブリッジはレスポールなどでお馴染みのチューン・O・マチックが標準です。

近年ではフロイドローズのようなビブラートユニットを搭載したモデルも登場しています。

 

名前の由来

エクスプローラーは日本語で「探求者」といった意味を持ちます。

エクスプローラーが発売された1958年当時はこんな奇抜な形のギターなんて存在していませんでしたから、エレキギターの新たなスタイルを探求する、といった意味を込めて命名されたようです。

時代が追いつくのには少々時間がかかったものの、奇抜なボディシェイプでエレキギターの1ジャンルを築いたことから、このギターにぴったりなネーミングといえますね。

 

いろいろなエクスプローラー

あまり知られていませんが、エクスプローラーにはいくつかの派生モデルが存在します。

エクスプローラー E/2

1979年から1983年まで生産されたモデル。「エクスプローラーⅡ」とも呼ばれます。

ボディシェイプこそ通常モデルと同一ですが、レスポールのような木目の出たメイプルトップやクリーム色のバインディング、細かいチューニングが可能なTP-6ブリッジなど、通常モデルよりも豪華な仕様となっています。

 

エクスプローラーⅢ

1984年から1年間のみ生産されたエクスプローラー。

ストラトキャスターを意識しているのかアルダー製のボディにP-90が3基マウントされています。

エクスプローラー エルボーカット

エクスプローラー6弦側のボディエンドが大きくカットしたモデルです。ボディ形状以外の仕様は通常モデルと共通です。

エリック・クラプトン氏がこの形状のエクスプローラーを使用していたことから、「クラプトン・カット」とも呼ばれます。

ボディエンドをカットすることよってボディと肘が当たりにくくなり、演奏性を向上させています。

リバースエクスプローラー

エクスプローラーの誕生50周年を記念して2008年に製作されたモデル。

その名の通りボディが通常モデルとは逆になっており、稲妻型のピックガードと相まって強烈なインパクトを持ったギターです。

奇抜なボディにばかり目がいってしまいますが、ゴールドハードウェアやカーボンファイバーが使用されたピックガードなど細部までこだわって作られたことがうかがえるギターです。

 

 

ネックのスケールの種類と違いに迫る

スケールとはギターのナットからブリッジサドルまでの長さのことで、短くなればフレットとフレットの間の距離は短くなり、逆に長くなればなるほどフレット間の距離は広くなります。

スケールは全てのギターが同じ、というわけではなくメーカーやモデルよって幾つかの種類に分けることができます。

そこで今回はスケールの種類やそれぞれの弾き心地、音に与える影響などを紹介していきます。

 

一般的なスケール

スケールはメーカーのホームページに書かれていることがほとんどで、店頭で表示しているところはほとんどありません。

お目当てのギターのスケールを知りたい場合はホームページで確認するか、店員さんに聞いてみましょう。

ロングスケール

ナットからサドルまでの距離が648mm(25.5インチ)のスケール。

ストラトキャスターやテレキャスターなどフェンダー製のギターに多くみられるスケールで、「レギュラースケール」や「フェンダースケール」と呼ばれることもあります。

ミディアムスケール

ナットからサドルまでの距離が628mm(24.75インチ)のスケールです。

ミディアムスケールはレスポールをはじめとしたギブソン製ギターに多く採用されていることから「ギブソンスケール」と呼ばれることもあります。

ミディアムロングスケール

ロングスケールとミディアムスケールの中間、638mm(25インチ)のスケールです。

PRS製のギターなどに採用されています。

ショートスケール

ナットからサドルまでの距離が609mm(24インチ)のスケールです。

ムスタングやジャガーなど一部のフェンダー製ギターやZO-3などのミニギターなどに採用されているスケールです。

 

まだまだある!? 変わったスケール

マルチスケール

ナットやサドル、フレットを扇型に配置して6弦側と1弦側でスケールを変えたもの。

6弦側のスケールを長くすることで各弦のテンションの均一化を図っています。

エクストラロングスケール

「スーパーロングスケール」とも呼ばれるエクストラロングスケールは、ロングスケールよりもさらに長い675mm(26.5インチ)のスケールです。

弦のテンションが必要となるダウンチューニングでの使用を想定したギターに用いられます。

 

スケールの違いによる弾き心地の変化

スケールが変わるとフレットとフレットの間の距離が変わるため、弾き心地に大きな影響をもたらします。

ロングスケールとショートスケールを比べた場合、単純計算で1フレット間の距離の差は1.8mmほどの違いですが、実際に弾いてみると数値以上の差を感じると思います。

フレット間の距離は狭い方が弾きやすそうな気もしますが、ハイポジションを多用する場合はフレットの間隔が狭すぎて弾きづらく感じてしまうこともありますので一概にはショートスケールが最高、とはいえません。

そしてスケールは長い方がチューニングが安定する傾向にあります。

ショートスケールのギターでアーミングやチョーキングを多用する場合はこまめにチューニングを行う必要があります。

また、弦のテンション(張りの強さ)はスケールが短いと弱くなります。このためショートスケールのギターに細い弦を張ってしまうとビビリが発生しやすくなってしまうので注意しましょう。

 

スケールが変わると音も変わる?

スケールの違いとしてやはり気になるのがサウンドへの影響です。

同じギターで異なるスケールのネックを持つギターはほぼ販売されていませんので、音の違いを比べることは難しいものの、一般的にはスケールが長い方が迫力のある音となり、短いスケールのものは軽快な音となる傾向にあります。

 

まとめ

  • 基本的にスケールはロング・ミディアム・ショートに分けられる
  • エクストラロングスケールやマルチスケールなど変わり種のスケールもある
  • ロングスケールはレギュラースケール、フェンダースケールとも呼ばれる
  • ミディアムスケールはギブソンスケールとも呼ばれる
  • スケールが長いと弦のテンションは高くなるがチューニングが安定する。短いスケールはこの逆となる
  • 長いスケールのギターは迫力のある音、短いスケールのものは軽快な音となる傾向にある

スケール重視でギターを選ぶことはほとんどないかもしれませんが、弾き心地を大きく左右する要素であることは間違いありません。

スケールは長かろうが短かろうが「慣れ」でなんとかなってしまうので気にするほどのことでなはいのかもしれませんが、気になる方は楽器店などへ足を運んで実際に違いを確認してみましょう。

フェンダー製ギターのようにデタッチャブルネックのギターであれば容易にネック交換が可能なので試してみても面白いかもしれませんね。