楽器店に足を運んでみると、赤や青、ゴールドなどなど様々な色で塗装されたギターが販売されています。
そんな塗装、様々な色のものが存在するのと同様に、使う塗料や塗装手法には様々な種類があり、どれも異なる性質を持っています。
そこで今回はギターやベースの塗装でよく使われる塗料や手法の特徴を紹介していきます。
なぜギターやベースには塗装がされているのか?
ギターやベースが塗装されているのは、「外観の美化」と「木材の保護」の2つ理由から。
この2つの役割について解説していきます。
1.外観の美化
ギターやベースはサウンドや演奏性だけでなく、その見た目も重要な要素です。
アコースティックギターは木材本来の色を活かしたナチュラルカラーで塗装されていることが大半ですが、エレキギターやベースにおいては鮮やかなパステルカラーの塗装や美しい木目を活かすシースルー塗装、派手なラメが入ったフレーク塗装など、様々な塗装手法や塗装色が採用されています。
塗装とは関係ありませんが、ネックやボディにLEDを内蔵し、光らせることができるギターやベースも存在します。
2.木材の保護
ボディやネックに使用されている木材は基本的に傷がつきやすく、気温や湿度の影響受けやすいデリケートな材です。
そんなデリケートな木材を衝撃や外気から保護するのも塗装の役割の1つ。
特に日本は欧米などと比べると高温多湿な環境なので、塗装の保護能力の恩恵は大きなものです。
塗装の種類
「塗装」と一口に行っても様々な塗料や塗装方法がありますが、ギターやベースでは「ラッカー塗装」「ポリ系塗装」「オイルフィニッシュ」の3つの塗装手法がよく使われます。
ラッカー塗装
ラッカー塗装は見た目の鮮やかさと音の良さを両立した塗料です。
一口にラッカー塗装といってもいろいろと種類があるのですが、ギターやベースには「ニトロセルロースラッカー」という塗料が使われることが多いです。
比較的古くから使用されている塗装方法で、ビンテージギターや高級ギターは大抵ラッカーで塗装されています。
発色が良く、独特のツヤを持つ一方で塗装がやや難しく(=コストが高い)、高温多湿に弱いといった特徴があります。
そしてラッカー塗装最大の特徴はなんといってもその塗膜の薄さです。
他の塗装方法と比べて塗膜を薄くできるため、ボディ材やネック材本来の鳴りを殺しにくく、よく鳴るギターになりやすい傾向にあります。
ラッカー塗装に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
ポリ系塗装
ポリ系塗装はポリエステル塗装とポリウレタン塗装の総称で、比較的最近開発された塗料。発色がよく、丈夫で低コストであるため、近年主流になっている塗装方法です。
ムラが出にくく、乾燥にそれほど時間がかからないため、大量生産に向いています。
一昔前までは安価なギターによく採用されている塗料というイメージでしたが、近年では比較的高価なギターにも採用されるようになってきています。
ラッカー塗装に比べると塗膜が硬く、厚いためサウンド面ではやや不利ですが、その分気温・湿度の変化や衝撃にかなり強くなっています。
ポリ系塗装に関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
オイルフィニッシュ
オイルフィニッシュは文字通りボディやネックにオイルを塗り込んだ塗装方法です。亜麻仁油や桐油など、植物系の油が使用されます。
音響特性は抜群に良い一方で、傷つきやすく変質も起きやすいデリケートな特性を持っています。
表面に油を塗っているだけなので派手な着色は行うことはできず、木材本来の茶色系の発色となります。
オイルフィニッシュはどんな塗料よりも塗膜(油膜)が薄いため、非常に鳴りが良く、音抜けの良いギターとなりますが、その代償として衝撃や気温・湿度の変化には弱く、取り扱いには注意が必要です。
ちなみにオイルを塗っていますがベタつきはほとんどなく、さらさらとした心地の良い肌触りです。
オイルフィニッシュに関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
そのほかの塗装
これまで紹介した塗装方法以外にも少数派ですが様々な塗装方法があります。
オイルフィニッシュと似た特性を持ち、バイオリンなどでも使用されるシェラック塗装やヴァーニッシュ塗装、カシューナッツから採れる油を使用し、ラッカー塗装と似た性質をもつカシュー塗装など、様々な塗料が存在します。
これらのレア塗料(塗装)は以下の記事で紹介していますので是非ご覧ください。
まとめ
- 塗装は見た目を良くし、ボディ材やネック材を傷や外気から保護するために行われている
- ギターやベースにはラッカー塗装、ポリ系塗装、オイルフィニッシュの3つが主に使われる
- ラッカー塗装は発色が良く塗膜を薄くでき、発色と音のバランスの取れた塗料
- ポリ系塗装は発色が良く低コスト。塗膜は厚めなので鳴りはラッカーに劣りがち
- オイルフィニッシュは塗膜(油膜)が極めて薄く、鳴りは非常に良いが、かなりデリケート