意外と知らない? ナットよもやま話

ギター
ギター ナット 種類

弦の横ずれを防いだり、0フレット的な役割を担ったりしている「ナット」。

普段はなかなか気にかけることの少ない部品かと思いますが、弦が直接触れている数少ない部分であるためチューニングや出音に大きな影響を与えている部品のひとつです。

今回はそんなナットの材質やメンテナンス方法について解説していきます。

 

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ナットの材質

プラスチック

最も多くのナットに使用されている素材がプラスチックです。1万円程度の安価なギターから数十万円する高級モデルまで幅広く採用されています。

プラスチックは安く加工が容易で、硬さの調節もしやすいのがメリット。耐久性では他のナット材には劣ります。近年では様々な原料を調合して耐久性を向上させたり、より滑りをよくしたりした製品も登場しています。

硬さはそれほどないため軽めのサッパリとした音となります。

 

牛骨

牛骨はプラスチックと並んでナットの定番素材です。ナットを交換する場合にまず候補として挙がるのが牛骨製のナットです。その名の通り牛の骨から作られており、プラスチック製のナットが普及する前まではナットの代名詞とも言える素材でした。

漂白剤で処理した真っ白な漂白牛骨ナットと漂白処理していない薄い飴色の無漂白牛骨ナットが存在します。店頭で販売されているのはほとんど漂白牛骨ナットで、無漂白のものはほとんど見かけません。

プラスチック製のものと比べて粘りがあるためローパワーなビンテージ系のサウンドとなります。

 

牛骨(オイル漬け)

牛骨をオイルに漬けることで滑らかさを追求したナットです。

色は濃い飴色を示し、滑りが良くなっているためチューニングが安定してアーミング時の狂いも軽減されます。

音に与える変化はほとんどありませんが、オイル漬けされたナットの方がほんの少しだけパワー感が薄れる傾向となります。

 

象牙

象牙は古くから印鑑や工芸品に珍重されてきた素材です。現在ではワシントン条約のもと取引が厳しく制限されているため入手するのが困難なナットです。高級モデルに採用されることが多いです。

適度な硬さを持ち、加工がしやすいためナット材としては優秀な性能を持っています。

音響特性としては高域がやや出たブライトな音となる傾向にあります。

 

TUSQ

入手が困難かつ高価な象牙の代替品としてGraph Tech社が開発したのがTUSQ(タスク)です。

人工素材でできており、価格は控えめながら象牙によく似た特性を持っているため近年の高級モデルに採用されていることの多い素材です。アコースティックギターのサドルなどにも使用されています。

音に関しては象牙とほとんと同じと思っていただいて問題ありません。

 

ブラス

ブラスは日本語で言うところの真鍮(しんちゅう)ですね。ナットに使用される素材の中では珍しい金属製です。

加工が難しいのが難点ですが、フレット同様金属製であるため開放弦の音と押弦時の音の違いを最小限とすることができます。

金属製と聞くとキンキンした音となってしまいそうなイメージがありますが、ブラスは適度な柔らかさも兼ね備えているため象牙よりもやや高域が出る程度でそれほど耳の痛い音となはりません。また、硬いのでパワー感もありサスティーンの伸びもかなり良好です。

 

カーボン

カーボンは炭素を主原料としている素材で、航空機や釣竿なんかに使用されていることでおなじみの素材です。

硬く耐久性があり、滑らかであるためチューニングが狂いにくいのが最大のメリット。ただ価格は少々お高めです。

音響特性としては高域がよく出る印象で、セッティングや聞く人によっては耳の痛くなる音と感じてしまうかもしれません。

 

ロックナット

フロイドローズトレモロが搭載されているギターについているナットです。

文字通りボルトで弦をロックする構造となっているためチューニングが狂いにくいのが最大のメリットです。逆にロックをかけられる構造であるがゆえチューニングや弦交換がめんどくさいというデメリットもあります。

ロック式のナットは鉄製がほとんど。そのためジャリっとした冷たいサウンドとなる傾向にあります。また、非常に硬いためサスティーンの伸びも非常に良いです。

 

ローラーナット

弦との接触部にローラが取り付けられているナットです。チューニングやアミーングで弦が動く際にローラーが追従して動く構造となっているため、こちらもチューニングの狂いにくいというメリットを持つナットです。ロック式とは違い固定しないため弦交換などのメンテナンスがしやすいのもメリットのひとつ。

部品点数が多く構造がやや複雑であるため壊れやすいといった欠点があります。

ローラーナットも鉄製であるためアタックの強いシャリシャリしたサウンドとなります。

 

ナットのメンテナンス

あまりメンテナンスするという意識が向かないナットですが、定期的にメンテナンスを行うことで弾き心地や出音の良さを保つことができます。

1.ナットの清掃

ナットはギターの弦に発生する錆びをもろに受ける部品です。

ナットの細い溝に錆びが入り込んでしまうとチューニングが不安定となったり開放弦を鳴らした時にビビりが発生したりするおそれがあります。

また、チューニング中に「ピキン」と音がするのもナットに錆びや汚れが付着しているのが原因である場合が多いです。(ナットの精度不良という場合もあります)

ナットの清掃は身近にあるもので簡単にできますので是非トライしてみてください。

必要なもの

  • 歯ブラシ(使い古した物でも可)
  • マスキングテープ
  • レモンオイル
  • 乾いたクロス

 

手順としては

  1. 傷がつかないようナットの上下にマスキングテープを貼る
  2. レモンオイルを少量つけた歯ブラシでナットの溝の汚れを掻き出す
  3. 乾いたクロスでナットを乾拭きし、マスキングテープを剥がす

仕上げに鉛筆やシャーペンの芯をナット溝にこすりつけることで、黒鉛がナットと弦との間の潤滑剤的な役割を果たしてチューニングが安定する、といった裏技もあります。また、ナットやブリッジなどに使える専用の潤滑剤も販売されていますのでそちらを使用するのも良いでしょう。

清掃は弦交換のたびに行うのがベストですが、最低でも1〜2ヶ月に1回ほど行えるといいでしょう。梅雨の時期などは少し頻度を高めるのがオススメです。

 

2.ナットの交換

どんな材質でできたナットでも弾き込んでいくうちに多かれ少なかれ磨耗していきます。

ネックの反りにもフレットの磨耗にも問題ないのに弦がビビったり、3フレットを押弦した際に1フレットと弦との間に隙間がなかったりしたときなどがナットが寿命を迎えて交換が必要となったタイミングです。

ナット自体は1000円程度で購入できますが、交換作業には特殊な工具や高い知識と経験が必要とされていますのでリペアショップに依頼するのが賢明です。工賃は1万円もかかりません。

 

 

最後に

冒頭にも記述しましたが、ナットはギターの中でも弦が直接触れている数少ない部品のひとつです。そのため弾き心地や出音に大きな影響を与えているんですね。

普段はあまり気にかけない部分かと思いますが、きちんとメンテナンスをしたり交換の際にこだわってみることでより扱いやすく自分好みのギターへ変貌させることができます。また、新しいギターを選ぶ際に気にしてみると新たな発見があるかもしれませんよ。

 

 

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