ジャズベやプレベに代表されるFender製のベースには、ピックアップやブリッジの上に銀色のカバーがついていることがあります。
これは「ピックアップフェンス」や「ブリッジカバー」と呼ばれるものですが、果たしてこれらにはどんな機能や効果があるのでしょうか。
今回は意外と謎の多いピックアップフェンスについて深掘りしていきます。
ピックアップフェンスの役割
ピックアップフェンスは大きく分けて以下の3つのような役割を持っています。
- 電気的な部品であるピックアップを隠す(保護する)
- ノイズ対策
- 倍音やサスティーンの調整
- 指置き
1.ピックアップを隠すためのカバー
Fenderの創業者であるレオ・フェンダーはもともとギター職人ではなくラジオの修理工でした。
そのためエレキギターやエレキベースでもピックアップのような電気的な部品はラジオ同様隠すべきだと考えられ、カバーがつけられました。同じ理由で初期のテレキャスターにもカバーがつけられています。
また、初期のエレキベースは太い音を出せるように親指で弾くことを想定して設計されたため、服の袖が弦に当たらないようにカバーを付けた、とも言われています。
2.ノイズ対策
ピックアップは磁石の力を使って弦の振動を拾っているため、当然ながらピックアップの周りには磁界が発生します。
この磁界、弦の振動だけでなく余計なノイズまで拾ってしまうため、その対策としてピックアップフェンスが導入されたとも言われています。
また、副産物的な効果として、フェンスを装着すると磁束密度(≒磁力)が上がりパワフルな音となります。
3.倍音やサスティーンの調整
ジャズベースやプレシジョンベースにはブリッジ側のカバー内部にスポンジと板バネが埋め込まれており、倍音やサスティーンを抑制している仕様のものもありました。
こうすることでアップライトベースのような音を出せるようにしたり、ミュートとして機能させたりすることができます。
しかし評判が悪かったのかスポンジが埋め込まれたブリッジカバーは数年で撤廃されてしまいました。
4.指(手首)置き
フェンスに手首を乗せることで安定したスラップ奏法が可能となります。
この方法を流行させたのは世界的なジャズベーシストであり、スラップ奏法の生き神様マーカス・ミラー。
動画の通り手首をフェンスの上に乗せて固定することで安定したスラッピングを可能としています。
マーカス・ミラーがピックアップフェンスがついたベースを使用していたことでピックアップフェンスに注目が集まるようになり、スラップ奏法を行うベーシストはこぞってフェンスをつけるようになりました。
ピックアップフェンスのデメリット
もちろんピックアップフェンスはいいことばかりではなく、フェンスが邪魔で指弾きがしにくかったり、ピックアップの真上(ピッキングのスイートスポット)で弾けないなどのデメリットが存在します。
実際にフェンスがついている個体を試奏し、演奏に影響がないか確認することが重要です。
ピックアップフェンスの後付け
最初からフェンスやカバーがついているベースは少ないため、これらを後付けしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
基本的にフェンスもカバーもネジで止まっているだけのシンプルな構造なので、電動ドリルさえあれば簡単に後付けをすることができます。
しかし「ねじ止めを行う=ボディやピックガードに穴を開ける」ということですので、本当に必要かどうかしっかり検討してから取り付けを行いましょう。
ベース本体に穴を開けたくない場合は、両面テープで固定するのもひとつの手段です。
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最後に
ピックアップフェンスやブリッジカバーには以下のような効果や機能があります。
- ノイズを軽減し、ピックアップのパワーを高める
- ピックアップの目隠し
- 指(手首)置き
- サスティーンや倍音の調整
ところが実際は期待していたほど効果が得られなかったり、指弾きの際に邪魔になったりしたことから時代の流れとともに数を減らしていった部品でした。
とは言えスラップがしやすいから、見た目がかっこいいから、などピックアップフェンスやカバーを取り付ける理由は人それぞれ。
フェンスがなくてもスラップが上手い方もいますし、逆にフェンスがあっても指弾きで至高のトーンを出している方もいます。
弾き心地も見た目もベースにとっては重要な要素ですのでご自身の考えやプレイスタイルに合わせてフェンスの有無を選ぶといいですね。