エレキギターの心臓とも言えるパーツ、ピックアップ。弦の振動を電気信号に変えるパーツなので構造が変われば当然サウンドにも変化が生じます。
もちろんギターのサウンドはピックアップだけでなく木材やパーツによっても変わってくるためピックアップだけで全てが決まるというわけではありませんが、それでもサウンドを決定づける要素としては大きな割合を占めています。
そこで今回はいろいろなピックアップの音の特徴を紹介していきます。
シングルコイルピックアップ
ストラトキャスターやテレキャスターなどのFender系ギターに搭載されていることの多いピックアップです。
非常にシンプルな構造で、全てのピックアップの基本となっています。その歴史は古く、1930年代にはすでに存在していたとか。
その名の通り1つのコイルで構成されているためノイズの影響は受けやすいものの、歯切れが良くきらびやかで繊細なサウンドが特徴です。クリーン〜クランチあたりが得意で、カッティングやバッキングなどのプレイにピッタリなピックアップです。
特殊なシングルコイル
シングルコイルピックアップは歴史が長く、様々な派生ピックアップが登場しています。
P-90
Gibson製ギターに搭載されていることの多いP-90は、1940年代後半に誕生したピックアップです。初期のレスポールに搭載されていることでもおなじみのピックアップですね。
通常のシングルコイルと比べるとサイズが大きくコイルの巻き数が多いため、シングルコイルながら太くハリのあるサウンドが特徴です。
シングルとハムバッカーの中間のような音、と言ってしまえばそれまでですが、そのバランスは絶妙で両者のいいとこ取りをしたようなピックアップとも評されます。
P-90はピックアップカバーの形状からドッグイヤータイプとソープバータイプに分けられますが、両者にサウンドの違いはありません。
ちなみにフェンダー ジャズマスターにもP-90と似たような形状のピックアップが搭載されていますが、中身は別物です。
構造的にはジャズマスターのピックアップはボールピース自体が磁石でできていますが、P-90は鉄製のボールピースの下に磁石が付いている、といった違いがあります。
サウンド的にはジャズマスターのピックアップは高域に寄ったFenderサウンド、P-90は中域に寄ったGibsonサウンド、といった違いがあります。
ハイロートロン
グレッチのギターに採用されているシングルコイルピックアップがハイロートロンです。
ハムバッカーっぽい見た目をしていますが、後述するフィルタートロンの片側のボールピースを抜いた構造となっているので、構造上はシングルコイルに分類されます。
コイル自体は2つあるのでハムバッカー同様ローノイズなのが特徴です。
ハイからローまでバランスよく鳴ることから「ハイロートロン」と名付けられましたが、実際のところはハイが強めな音がします。かといって耳障りな音ではなく、角のとれた聞きやすいサウンドです。
ダイナソニック
これまたグレッチ製ギターに搭載されていることの多いピックアップです。
通常のシングルコイルよりもやや大きめなのが特徴で、見た目も通常のシングルコイルやP-90と比べてもかなり特徴的です。
音の特徴を挙げるとするとシングルでもない、ハムバッカーでもない中間的な音、と言えます。
そう聞くととP-90ピックアップと同じじゃん、と思ってしまいますが、ダイナソニックの方がローとハイがよく出るいわゆるドンシャリ系な音。P-90は優等生な感じでダイナソニックは暴れん坊、といった感じでしょうか。
ハムバッキングピックアップ
レスポールやSGなどGibson系ギターに搭載されていることの多いピックアップがハムバッキングピックアップです。ハムバッカーとも呼ばれますね。
シングルコイルを2つ並べた構造をしており、それぞれのコイルがノイズを打ち消し合うため、ノイズが少ないのが特徴です。
シングルコイルと比べるとパワーが強いため、太くコシのあるサウンドとなります。このためディストーションやファズなど激しい歪みや温かみのあるクリーントーンまで幅広く使えます。
一方でシングルコイルほどの歯切れの良さはないため、クランチくらいの歪みやカッティングなどのプレイはあまり得意ではありません。
ストラトやテレキャスターなどのギターにポン付けできるシングルコイルサイズのハムバッカーも販売されています。
また、近年ではシングルとハムバッカーを切り替えられる機能(コイルタップ)を有したモデルも販売されています。
特殊なハムバッカー
フィルタートロン
またまたグレッチ製のギターに搭載されていることの多いピックアップです。過去にはフェンダーよりフィルタートロンを搭載したテレキャスターが販売されていました。
基本的な構造は一般的なハムバッカーと同一ですが、コイルの太さや磁石のサイズなど、細かな違いがあります。
ハムバッカーといえばパワーのあるマッチョなサウンドが特徴ですが、フィルタートロンは鼻が詰まったような繊細でトレブリーな音が特徴です。このことからハムバッカーでありながらクリーン〜クランチが得意で、カントリーやロカビリーといったジャンルでよく使用されます。
通常のハムバッカーと比べるとノイズが多かったり歪みがあまり得意ではなかったりと、デメリットが多めのピックアップですが、その独特な音色は今なお世界中の人々を魅了しています。
また、近年では激しい歪みにも対応できるようパワーアップしたフィルタートロン(パワートロン)も登場しています。
アクティブピックアップとパッシブピックアップ
これまで紹介したピックアップは、電源を必要としないパッシブピックアップと呼ばれるものです。
パッシブピックアップと双璧をなすピックアップ として、EMG社に代表されるアクティブピックアップと呼ばれるピックアップも存在します。
アクティブピックアップ最大の特徴は、プリアンプが搭載されているため専用の電源が必要であること。このためパッシブピックアップを搭載したギターやベースにアクティブピックアップを搭載しようとした場合は大掛かりな加工が必要となります。
気になるサウンドですが、プリアンプを搭載している故ノイズにはめっぽう強く、クリアで抜けの良いサウンドとなる傾向にあります。
パッシブピックアップと比べると極端にクリアであるため「味気なさすぎる」といった声もありますが、メタルやパンクなどの激しく歪ませるジャンルにはもってこいのピックアップです。
まとめ
シングルコイルピックアップの特徴
- ノイズが多めだが、歯切れが良く高域の出たジャキッとしたサウンド
- クリーンやクランチが得意で、カッティングやバッキングなどのプレイに最適
- P-90は太くハリのあるサウンド
- ハイロートロンは高域が強めながら角の取れた聞きやすいサウンド
- ダイナソニックはハイとローがよく出るドンシャリ系のサウンド
ハムバッカーの特徴
- ノイズが少なく、太くハリのあるサウンド
- クリーンやディストーションが得意で、リードプレイに最適
- フィルタートロンは高域がやや出た鼻の詰まったようなサウンド
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