空間系エフェクターの代名詞、ディレイ。
現代においては歪み系エフェクターに次いで使用されることの多いエフェクターかと思います。
今回はそんなディレイの歴史や種類について紹介していきます。
ディレイの歴史
もともとディレイはテープエコーから派生したエフェクターです。
テープエコーはテープレコーダーに輪っか状にしたテープをセットし、録音→再生→消去を繰り返すことで「やまびこ」のような効果を得るエフェクターです。
テープエコーは1940年代に登場し、1960年代まではディレイの効果を得るためにはテープエコーを使うほかありませんでした。
そんな中1969年にアナログディレイの心臓部とも言えるBDD素子が発明されると、1970年代前半にElectro-Harmonixより世界初のアナログディレイ、Slap Back echoが発売。そのほかの会社もこれに続けと言わんばかりに続々とアナログディレイをリリースしていきました。
アナログディレイはテープエコーよりも安く、コンパクトであったため瞬く間ギタリストのマストアイテムとなります。
そして1979年には世界初のデジタルディレイ、Lexicon Prime Time(ラック式)が発売されました。しかし当初のデジタルディレイは超高級品で、庶民には手の届かない代物でした。
すると1983年にBOSSよりペダルタイプのデジタルディレイが登場、手の届きやすい価格でプロ、アマチュア問わず多くのギタリストに愛用され、現在に至ります。
ディレイのサウンド
ディレイ(delay)は直訳すると「遅延」とか「遅れる」といった意味になりますが、ディレイはまさにその名の通りのエフェクト。原音の後に遅延させた音を出力し、やまびこのような反響音を得ることができます。
音に奥行きや厚みが出ていますね。製品によってはリバーブのような効果を得たり、発振させたりすることもできます。
ディレイの操作系はだいたい以下のような感じです。
- TIME:原音が鳴ってからディレイの音が鳴るまでの時間
- FEEDBACK:ディレイの反響回数(反響強さ)
- LEVEL:ディレイのかかり具合
製品によってはエフェクト音のミックス比率を調節するつまみやモード切り替えのスイッチなどがついている場合もありますが、基本はこの3つのつまみで調節を行います。
ディレイの種類
1.アナログディレイ
「BBD素子」と呼ばれる部品が使用されているディレイのことを俗に「アナログディレイ」と呼びます。
BBDは"Bucket Brigade Device"の略で、和訳するとバケツリレー素子といった意味合い。
BBD素子の中にはコンデンサが数千個組み込まれており、コンデンサからコンデンサへ信号をバケツリレーのように伝達させていく... というのを数千回行うことで遅延を発生させる、といった仕組みです。
アナログディレイには以下のような特徴があります。
- ディレイタイムにばらつきがある
- フィードバックを繰り返すたびに音質が劣化していく
- 長いディレイタイムを取ることができない
- フィードバック量に制限がある
- 温かみのあるサウンド
アナログディレイは極端なセッティングができず、ディレイタイムも音質も安定しないといった欠点がありますが、それがかえって自然に聞こえ、耳障りのよい温かみのあるサウンドとなります。
2.デジタルディレイ
デジタルディレイは入力をデータ化しそれをコピーしていくことでディレイ効果を生み出すペダルです。
デジタルディレイの特徴は以下の通りです。
- 音質の劣化がない(高音質)
- ディレイタイムやフィードバックに狂いがない
- ディレイタイムやフィードバックを自在に設定できる
- 無機質なサウンド
アナログよりもデジタルの方がディレイとしての機能は優秀で、寸分狂わぬ時間・音質でディレイ音を出力できたり、様々なディレイモードを搭載していたりとかなり幅広く使えるのがデジタルディレイの強みです。
ただデジタルにはアナログのようなルーズさがないので無機質なサウンドになってしまいがちです。
しかし最近ではデジタルでもアナログのような音質の劣化感やディレイタイムの不均一さを再現した製品もあり、デジタルディレイのデメリットは感じにくくなってきています。
おすすめディレイ
1.MXR / M169 Carbon Copy Analog Delay
3つのつまみを持ったシンプルなアナログディレイです。
特筆すべきはMODスイッチで、スイッチを押すことにより独特の「揺れ感」あるテープエコーのようなサウンドへと切り替えることができます。
2.TC ELECTRONIC / Flashback 2 Delay
9つのディレイとルーパー機能を有するデジタルディレイです。
パソコンと接続してパラメータを調整できたり、フットスイッチに感圧センサーが組み込まれていたりと多機能でハイテクなディレイ。
3.BEHRINGER / VD400 Vintage Delay
泣く子も黙る激安エフェクターブランド、BEHRINGERのアナログディレイです。
4000円でお釣りがくる価格ながら高品質なサウンドで、初めてのディレイにもおすすめなペダルです。
まとめ
ディレイには以下のような特徴があります。
- やまびこのような反響音を付加することができる
- テープエコーから発展したエフェクト
- 現在主流であるペダルタイプのディレイは1970年代に登場
- アナログディレイは調整幅は狭いが温かみのある音質
- デジタルディレイは無機質だが多機能
ディレイも歪み系エフェクター同様かなりの数のエフェクターが出回っています。
どんなディレイにも一長一短ありますので、実際に試奏したり試奏動画をチェックしたりして自身のプレイスタイルに合ったものを選ぶと良いですね。