Fender製ギターに多く使われる木材、アルダーとアッシュ。
どちらもボディ材としてよく使用される印象のある材ですが、これらにはどんな特徴やサウンドの変化があるのでしょうか。
今回はアルダーとアッシュ、それぞれの特徴や種類について紐解きながら2つの木材が持つ魅力に迫っていきたいと思います。
アルダー材について
そもそもアルダーとは?
アルダーは北米やヨーロッパなどに生息している広葉樹です。
黄色っぽい色をしており、「木材」と聞いて多くの人が想像するような色をしています。
杢目は薄く細いためやや地味な印象で、ギター材として使用する場合はシースルー塗装されることはあまりありません。ベタ塗りが多数を占めます。
加工が容易であるため、複雑な造形とすることも可能な材です。また、他の材よりも狂いが出にくいこともあり、木材の中ではかなり優等生的なポジションです。
アルダーの特徴
アルダーはボディ材としての使用が主で、ネック材や指板材として使うことは全くといっていいほどありません。
アルダーを使用したギターは鳴りがよく、高域〜中域が少し出たバランスの良い音となる傾向になります。クリーン〜クランチが得意。
音響特性や加工性に優れ、価格も安いためFenderなどのボルトオンネックギターのスタンダードとも言えます。
アルダーの種類
1.レッドアルダー
レッドアルダーはカナダ西部やアメリカ西部、ヨーロッパなどに生息している木です。
アルダーにはいくつか種類がありますが、ギターに使用されるのはほぼレッドアルダーのみ。
使用木材に「アルダー」と書かれていた場合はレッドアルダーを使用したギターであると考えて間違いないでしょう。
アッシュ材について
そもそもアッシュとは?
アッシュは主に北米に自生している木で、ホワイト・アッシュやスワンプ・アッシュなどいくつかの種類があります。
白っぽい色にはっきりした杢目が特徴で、ギター以外にも家具や野球のバットなどにも使われる、北米ではメジャーな木材です。
個体差が大きく、杢目のある部分とそうでない部分で硬さに大きな差があるため、穴あけや仕上げなどの加工がやや難しいのが難点。また狂いも出やすく、楽器に使用する際には十分な乾燥が必要となります。
アッシュの特徴
アルダー同様ボディ材として使用されることがほとんどです。
アッシュで作られたギターは高域の効いたキラキラサウンドが特徴。乾いた音でもあるのでバンドアンサンブルの中でも埋もれにくい音となる傾向があります。
先述の通り個体差が大きいため、モノによってはキンキンし過ぎてしまったり、逆にそれほど高域が出なかったりする場合があります。
アッシュの種類
1.ホワイト・アッシュ
カナダ南東部とアメリカ東部に生息しているアッシュです。
ホワイトアッシュの中でも軽いものは「ライトウェイトアッシュ」と呼ばれます。
Fender社の70年代に生産されたギターはホワイトアッシュがよく使われていました。
やや重く、硬さもあるため低高域がやや出たドンシャリサウンドとなるのが特徴です。このためホワイトアッシュはベースで使われることの多い木材です。
2.スワンプ・アッシュ
スワンプアッシュはホワイトアッシュ同様カナダ南東部からアメリカ東部にかけて生息しているアッシュです。スワンプアッシュの方が湿気の多い地域に生息する傾向にあります。
こちらも比較的軽めのものはライトウェイトアッシュとも呼ばれます。
生育が早く安価に入手できることもあり、50年代に生産されたストラトキャスターやテレキャスターに多く使われていました。現在でも多くのギターに使用されています。
ホワイトアッシュと比べると柔らかくて軽いため、中域の効いた温かみのある音となります。
3.セン
センは日本や中国などに生息する木で、「ハリギリ」や「ジャパニーズアッシュ」などとも呼ばれます。本来センとアッシュは全く別の木なんですが、特性が似ているためアッシュの仲間として扱われることがほとんどです。
成長速度が速く、日本国内で容易に入手できるため、国産ギターに使用されることの多い木材です。
ホワイトアッシュやスワンプアッシュと比べると柔らかいため、角が取れたバランスの良い音となります。
まとめ
アルダー
- 北米やヨーロッパに生息しており、やや地味な杢目をしている
- ギターに使用されるのはほぼレッドアルダー
- 加工がしやすく、ボディ材としての使用が主
- 高域や中域がやや出たバランスの良い音となる
アッシュ
- 北米東部に生息しており、はっきりした杢目が特徴
- ホワイトアッシュやスワンプアッシュなど、いくつか種類がある
- 個体差が大きく、加工がやや難しい
- ボディ材として使用される
- 高域が出るためキラキラした音となる
アッシュとアルダー、似たような材かと思いきや比べてみると思いの外大きな違いがあることがわかりました。
ギターを選ぶ際には「使われている木材」という視点で選んでみるのも面白いかもしれませんね。