世の中にゴマンとある歪み系エフェクターですが、レビュー記事なんかを見ていると「TS系のオーバードライブです」とか「このペダルはダンブル系の歪みですね」みたいな言葉がよく出てくるかと思います。
言葉としては聞いたことがあるけれど、言葉だけでサウンドをイメージするのは難しいですよね。
TS系とかダンブル系というのは具体的にどんなサウンドで、どんな特徴を持っているのでしょうか。
今回はよく製品化され、「〇〇系」と謳われることの多いペダルの元ネタについて紹介していきます。
TS系
「TS」はibanezのオーバードライブ「Tube Screamer(チューブスクリーマー)」の略。
チューブスクリーマーは1979年に誕生し、世界中のギタリストに愛用されているオーバードライブ。今現在も販売されている超ロングセラーなペダルです。
チューブスクリーマーの特徴は以下の通り。
- ローゲイン
- ミドルに寄った粘りのあるトーン
- ハイとローがカットされる
特徴だけ見ると単体で使おうとしてもそれほど歪まないし抜けも悪いペダルに思えてしまいますね。
しかしチューブスクリーマーはブースターとして使用することでその真価を発揮するペダル。アンプやペダルで作ったドライブサウンドの余分なハイとローをカットして耳障りの良い抜けるサウンドへと調整してくれます。
TS系のペダルとして以下のようなものが挙げられます。
- ibanez / TS9、TS808
- Fulltone / FullDrive
- Leqtique / Maestoso
- ARION / MTE-1(TUBULATOR)
プレキシ系
「プレキシアンプ」と呼ばれるアンプを参考にしたモデルのことをプレキシ系といいます。
プレキシアンプは1960年代中期〜1970年代に製造されたマーシャルのアンプのことを指します。この頃に製造されたアンプは数多くのミュージシャンに愛用されており、ビンテージアンプとして高値で取引されています。
「プレキシ」とはプレキシガラス(アクリル板)をアンプのコントロールパネルに使用していることが由来で、一口にプレキシサウンドといっても製造された年やモデルによってサウンドはまちまちです。
共通する特徴として以下の点が挙げられます。
- 温かみのある歪み
- ふくよかなミドルに煌びやかなハイ
プレキシ系のペダルは総じてアンプライクな音が特徴です。メインの歪みとしても使えるペダルですね。
プレキシ系のペダルとして以下のようなものが挙げられます。
- One Control / Purple Plexifier
- Tech 21 / Hot-Rod Plexi
- Carl Martin / PlexiTone
ブラウン系
こちらもマーシャル製アンプのサウンドを模したペダルに使われることが多い系統です。
エディ・ヴァン・ヘイレン氏のサウンドがブラウンサウンドとして有名ですね。
元は同じマーシャル製アンプなのでプレキシ系と似ていますが、サウンドの特徴としては以下のような点が挙げられます。
- プレキシ系と比べ強めの歪み
- 太く濁りのないクリアなサウンド
総じてモダンなサウンドなのでハードロックにぴったりかと思います。
ブラウン系のペダルとして以下のようなものが挙げられます。
- 320design / Brown Feather
- Amptweaker / TightRock
- Wampler Pedals / Pinnacle Deluxe
ケンタ(ケンタウロス)系
ケンタウロスはKLON社によって1994年から2009年の間に生産されていたオーバードライブペダルです。生産数はおよそ8000台程度と非常に少ないため市場では高値で取引されています。
製造年によって仕様がまちまち変わるので一概には言えませんが以下のようなサウンドが特徴。
- ローゲイン
- 控えめな高域に太い中低域(枯れたサウンド)
- バッファードバイパスにより繋ぐだけで音の角が取れ、分離感が出る
サウンドの特徴的にTS系のペダル同様ブースターとして使うことが多いペダルかと思います。
現在はケンタウルスの後継機としてKTRというペダルが販売されています。
ケンタウロス系のペダルとして代表的なものに以下のようなものがあります。
- Electro-Harmonix / Soul Food
- J.ROCKETT AUDIO DESIGNS / ARCHER、ARCHER IKON
- Walrus Audio / VOYAGER
マフ系
Electro-Harmonix製のファズ、Big Muffのサウンドをインスパイアしたペダルをマフ系と呼んでいます。
Big Muffは1960年に販売をスタートし、今も販売されているロングセラーなファズです。
このビッグマフにも製造年やモデルが数多くありますので特徴を説明するのは難しいですが、特徴として以下のような点が挙げられます。
- 温かみのある歪み
- 圧倒的な音圧
- どんなセッティングでもビッグマフの音になる
これぞエレハモ、といった特徴のペダルですね。グランジロックやガレージロックなどに合うファズだと思います。
マフ系のペダルとして以下のようなものが挙げられます。
- EarthQuaker Devices / Cloven Hoof
- WAY HUGE / Swollen Pickle MkII
- Animals Pedal / FISHING IS AS FUN AS FUZZ
ダンブル系
「ダンブル」とはアメリカのエンジニアであるハワード・ダンブル氏が製作したアンプの愛称です。
ダンブルアンプは1台1台ダンブル氏によってハンドメイドされるため、ほぼ市場に出回らない激レアなアンプです。また、オーダーメイドであるため同じモデルでもサウンドが異なるのも特徴のひとつ。
そんなダンブルアンプのサウンドを再現したのが「ダンブル系」のペダルというわけですね。
ダンブルサウンドの特徴は以下の通り。
- 音の立ち上がりが早い
- 滑らかかつナチュラルなトーン
- 太くウォームな歪み
- ピッキングやボリュームコントロールの追従性が良い
言葉で表してしまうとよくある特徴なんですが、これらの特徴を非常に高い次元で表現できるのがダンブルアンプの強みかと思います。
ダンブル系ペダルには以下のようなものがあります。
- Mad Professor / Sweet Honey Overdrive
- One Control / Golden Acorn OverDrive Special
- Shin's Music / Dumbloid Special
エコープレックス系
エコープレックスはMestro社から発売されていたテープエコー。
「歪みなのにエコー?」と思われるかもしれませんが、エコープレックスはプリアンプ部が非常に優秀で、エフェクトをオンにせずとも繋ぐだけで音が良くなると評判のエフェクターでした。
そのエコープレックスのプリアンプ部を再現したのがエコープレックス系のペダルになります。
エコープレックス系ペダルに見られる特徴は以下の通りです。
- ほぼ歪まない
- 原音に忠実
- 音に太さとツヤが加わる
以上の特徴からエコープレックス系を謳っているペダルはブースターやプリアンプがほとんどです。
また、繋ぐだけで音がワンランクアップしたような効果を得られるので、バッファ的な使い方をすることも多いペダルです。
エコープレックス系のペダルは以下のようなものがあります。
- Xotic / EP Booster
- JIM DUNLOP / Echoplex Preamp
- MXR / M293 Booster Mini
トーンベンダー系
トーンベンダーはイギリスのエンジニア、ゲイリー・ハースト氏が設計・製作したファズペダルのこと。
Mk.Ⅰ、Mk.Ⅱ、Mk.Ⅲの3世代存在し、それぞれ異なったキャラクターを持ちつつも総じて以下のような特徴があります。
- 高いボリューム追従性
- 滑らかかつ太い歪み
ボリューム操作のみでクランチ〜ファズとコントロールできるのがトーンベンダー最大の強みです。
トーンベンダー系ペダルには以下のようなモデルがあります。
- Manlay Sound / Ronno Bender
- D*A*M / 1966
- GuitarSystems / Tony's Bender Tool
最後に
いかがでしたでしょうか。
やはり様々なメーカーが元ネタとするだけあってどのアンプもペダルも素晴らしいサウンドのものばかりです。
メーカーやビルダーによってサウンドの解釈が異なるので、同じ系統を謳うペダルでも製品によってキャラクターが異なるのは面白いですね。
歪み系のペダルを選ぶ際の参考になれば幸いです。