ギターをプレイする際に最も触れることの多い場所である「指板」。
ギターにおいてはボディやネック同様数多くの木材が使用されています。
指板に使用される木材については「美しい見た目」や「滑らかさ」などが気になるポイントですが、多くのギタリストにとって最も重要なのは「出音に与える影響」ではないでしょうか。
無論ギターの音の大半を構成するのは弾き手やピックアップ、アンプなどで、指板材がギターの音に与える影響は微々たるものです。しかしギタリストにとってはその微々たる差が大切だったりするんですよね。
そこで今回は指板によく使用される木材をピックアップし、それぞれの持つ特徴や音の傾向などを紹介していこうと思います。
1.メイプル
メイプルは日本を含むアジアや北米を中心に生息する木で、日本では「カエデ」という名で知られています。秋に紅葉するあれです。
ストラトキャスターやテレキャスターなどのFender系ギターでおなじみのメイプル指板。指板材としてだけでなくボディやネックにも使用される木材です。
メイプルはかなりの硬さを誇るため、指板材として使用するとアタックが強く、高域が強く出たキラキラサウンドとなる傾向にあります。
メイプルを使った指板には「ネックと一体となったもの」と「ネックと別体になったもの(貼りメイプル)」の2種類があります。両者の違いはほぼありませんが、強いて挙げるとすればネックと一体になったメイプル指板の方がよりタイトな音となる傾向にあるようです。
メイプル材については以下の記事で詳しく紹介していますので参考になればと思います。
2.ローズウッド
ローズウッドは南米やアフリカなどの赤道近くの国に多く生息している木で、ギターにはインディアン・ローズウッドやマダガスカル・ローズウッドなどが使用されます。高級材「ハカランダ」もローズウッドの一種です。
近年では乱伐によって数が減り、ワシントン条約で保護されています。
ローズウッド指板の特徴として、中域〜低域の出た太く粘りのある音となる傾向にあります。メイプルと比べると柔らかいため、アタック感はそれほど強くありません。
ローズウッド材については以下の記事で詳しく紹介していますので参考になればと思います。
3.エボニー
エボニーはアフリカや東南アジアに生息する木です。ギターだけでなくバイオリン等の指板にも使用されています。ローズウッド同様ワシントン条約で保護されています。
エボニーの木は成長が遅く、指板に使われるような真っ黒なエボニーは1本の木から少量しか採れないため、エボニー指板は高級ギターに使用されている場合がほとんど。近年では良質なエボニーの入手が難しくなってきており、色の薄いエボニーを黒く着色したり、後述するリッチライトなどの人工材で代用したりするなどの工夫がなされています。
エボニー指板を搭載したギターはアタックが強く、コンプ感のある音となる傾向にあります。また密度が高いのでサラサラしており、滑らかなフィンガリングが可能となります。
4.リッチライト
先述のエボニーの代替材といて登場したのがリッチライトです。
リッチライトは木材ではなく、紙や樹脂などを配合して作られた人工素材で、リッチライト社が開発・製造しているためこう呼ばれています。
人工素材であるため温度や湿度に対して強かったり、メンテナンスを頻繁に行わなくて良いといったメリットがあります。価格も魅力の1つですね。
ここ数年のGibsonやMartin製ギターに使われているこの素材ですが、見た目や硬さはエボニーそっくり。そのためエボニーとほぼ同一の特性を持ちますが、リッチライトの方が若干柔らかいためアタック感が弱く感じられることもあります。
とはいえ個体差もあるので、音を聞き分けるのはかなり難しいでしょう。このあたりは好みの領域です。
5.ウェンジ
ウェンジはアフリカ中部に生息する木で、エボニーほどではないものの黒に近い色をしています。指板だけでなくネック材としても使用されます。
重く、適度な硬さを持つのが特徴で、乾燥に時間がかかるためコストが高くなるのが難点。(それでもエボニーやローズウッドよりは安価です)
比較的供給量が安定しているので今後指板材のスタンダードになるかもしれない木材です。
硬さがある、といった特徴から高域に寄ったジャキッとしたサウンドが特徴です。「ローズウッドっぽい音のするメイプル」といった感じでしょうか。
6.ココボロ
ココボロはローズウッドの一種で、中南米に生息する木です。
アコギのサイド/バック材によく使用され、指板材としてはSugi Guitarsなどがよく使用している印象です。
一般的なローズウッドと比べ赤黒く、硬さがあります。油分が非常に多いのも特徴です。
基本的にローズウッドと近いような音となりますが、ココボロのほうが少しだけタイトな音になる傾向にあります。
指板に使用される木材に限らず、ローズウッドやエボニーなどの木材は年々数が減ってきており、将来的にはこれらに取って代わる木材が登場するかもしれませんね。
今回紹介したもの以外にも指板材として使用される木材は多数ありますので順次更新していきます。