どんなものでも経年劣化や環境の変化によって本来の性能が出せなくなったり使い心地に変化が生じることがあります。
これはギターにも言えることで、経年劣化や環境の変化によってビビリが発生したり音詰まりが発生したりと何かとトラブルを抱えやすくなってしまいます。
今回はギターを使っている中でよく起こりえるビビリや音詰まりなどのトラブルを症状別に分け、それぞれの対処方法を紹介していきます。
弦がビビる
弦を弾いたときに「ビィーン」といった感じでビビる場合。基本的にビビリは押さえているフレット以外のフレットに弦が当たってしまうことで発生します。
ビビリの原因は以下のようなことが考えられます。
- ネックが反っている
- 弦高が低すぎる
- フレットが磨耗している、へこみがある
- ナットが磨耗している
生音ではビビっているように感じてもアンプを通して聞くと気にならない場合もありますので調整や修理が必要かどうかはアンプからの音で判断しましょう。
1.ネックが反っている
弦がビビるな、と感じたらまずはネックの反りを確認してみましょう。
というのもギターのネックは気温や湿度の影響を受けやすく、反り具合は結構変わってしまうものです。
順反りの場合は5フレット以下が、逆反りの場合は1〜5フレットあたりでビビリが発生しやすくなります。
これはあくまで傾向なので以下の手順で実際にどちらに反っているのか必ず確認しましょう。
ネック反りの確認方法
- 1フレットと最終フレットを指で押さえる
- 12フレットと弦の高さを確認する
- 紙1枚分くらいの隙間があるのが正常。それより広い場合は順反り、狭い場合は逆反り
ネックの反りはトラスロッドで調節します。順反りの場合はロッドを締め(時計回り)、逆反りの場合は緩め(反時計回り)ましょう。
このとき注意しなければならないのはトラスロッドを回す量です。1日で回すのは90度までにしておきましょう。それ以上回してしまうとネックが反りの変化に耐えきれず、割れたり波打ってしまったりするおそれがあります。
弓形に反っている場合はトラスロッドで調整できますが、波打っている場合は特殊な設備による矯正が必要となりますのでリペアショップに持ち込むなどして修理してもらいましょう。
2.弦高が低すぎる
同じ弦高でもネックの反り具合によってはだんだんとビビってくるようになります。
弦高はFender系ギターなら6弦側で2mmくらい、Gibson系のギターであれば1.8mmくらいが目安。
調整の際はこれよりもちょっと高めに設定しておいて、全フレットを鳴らしながらビビらないギリギリの高さまで下げていきましょう。
3.フレットが磨耗している・へこみがある
金属でできたフレットとはいえ、弦と擦れ合うことによって徐々に磨耗していきます。また、何かにぶつけてへこみが発生してしまうこともあります。
フレットの摩耗は新品から5年経ったあたりから注意が必要です。
フレットが均一に磨耗していけばビビリは発生しませんが、全てのフレットを均等に使う事はまずありえませんよね。当然よく使う部分はフレットの減りが速くなり、あまり使わない部分はほとんど減りません。
偏磨耗してきたなと感じた場合はフレットの交換...ではなくまずはフレットのすり合わせから行ってみましょう。
すり合わせとは、場所によってバラバラになってしまったフレットの高さを均一にし、形を整える作業です。専用の工具も経験も必要な作業であるため、リペアショップに作業を依頼するのが賢明です。
すり合わせでも対応し切れないほどフレットが減ってしまっている場合は交換が必要になります。
4.ナットが磨耗している
ネックの反りに異常がないのに開放弦でビビリが発生する場合はナットの摩耗が疑われます。
ナットはフレットほど激しい摩擦にさらされる事は少ないですが、樹脂や牛骨といった比較的柔らかい素材で作られているため、使っているうちにだんだん磨耗してきます。
ナットはフレットのようにすり合わせができないので「交換」といった形になりますが、ナットの交換も技術や経験がモノを言う作業となりますのでリペアショップに依頼するのが賢明です。
チョーキング時に音が詰まる
チョーキング時に音が詰まるのはフレットの偏摩耗が原因であることが多いです。
そのため弦のビビリ同様フレットのすり合わせを行うことで解決するでしょう。
ちなみにFender系のギターは指板のRがきついため、構造的にハイポジションでのチョーキングの際に音詰まりが発生してしまいます。
逆に言うと指板のRがゆるいギターほどチョーキング時の音詰まりは発生しにくくなります。
ある特定の音だけ鳴りが悪い
他のフレットと比べてある特定のフレットだけ極端に鳴りが悪い場合は以下の現象が考えられます。
- フレットが浮いている
- デッドポイント
1.フレットが浮いている
通常フレットは指板に密着していますが、温度・湿度の変化やネックの反りによってフレットが指板から離れて浮いたような状態になってしまうことがあります。
こうなってしまうと弦の振動がフレットに吸収されてしまい、本来の響きを得られなくなってしまいます。
怪しいと感じるフレットを指で押してみたり指板との間に隙間がないか目視で確認してみたりしましょう。
浮いてしまったフレットはハンマーで叩くことで元に戻すことができますが、叩く位置や力加減によってはフレットが変形してしまう恐れがあるためリペアショップで修理してもらうのがおすすめです。
2.デッドポイント
どんなギターにも多かれ少なかれ「デッドポイント」が存在します。
デッドポイントとは、ある特定の周波数の音だけをボディやネックが吸収してしまい、サスティーンが出なくなったり音が詰まったりするポイントのことです。
デッドポイントは木材の特性によって引き起こされる現象あるため、ネックやボディを交換しない限り完全になくす事はできません。リペアショップに持ち込んでも断られる可能性が高いです。
しかし対策がないわけではなく、Fat Fingerに代表されるようなヘッドのオモリをつけることによって幾分マシになる場合があります。
ただこの方法はギター本来のトーンを変えてしまったり、今度はほかの場所にデッドポイントが発生したりすることもあるため「運」の要素が強いです。
また、ギターのボディにスピーカーを貼り付け、数週間スピーカーから音を出しておくとデッドポイントが目立たなくなる、なんてオカルトのような話もあります。
最後に
ギターのトラブルは同じ症状でも様々な要因があります。
もちろん自分で原因を究明し、直せるのがベストなのは言うまでもありませんが、どうしても原因がわからなかったり自分で処置をするのに自信がなかったりする場合はリペアショップに持ち込みましょう。
お金はかかってしまいますが、自分で直すよりも確実ですし仕上がりも納得いくものになると思います。
日常のメンテナンスをしっかり行えば異常に早く気づいて対処することができますし、メンテナンスや修理をしながら末長く使っていくことで愛着も湧いてきます。
ギターを弾いていく上でトラブルは避けては通れない道ですが、こうしたトラブルとうまく付き合いながら楽しいギターライフを送っていきましょう。