7弦ギターなどと並んで多弦ギターの代表格とも言えるのが12弦ギターです。
レッド・ツェッペリンの「天国への階段」やイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」などで使用されていることでもお馴染みのギターで、6弦ギターにはない豊かな響きでアンサンブルに彩りを加えることができます。
今回はそんな12弦ギターの歴史や特徴に迫っていきたいと思います。
12弦ギターとは?
12弦ギターは6弦ギターの弦(主弦)にオクターブ上または同音の弦(副弦)を追加したギターです。
アコースティックギターがほとんどで、12弦のエレキギターは少数派です。
12弦ギターは隣り合う2本の弦が隣接した形で配置されており、2つの弦を同時に押弦・ピッキングして音を出します。
各弦の太い方(1弦側)を主弦、もう片方(6弦側)を副弦、と呼びます。
チューニングは6弦ギター同様「E-A-D-G-B-E」となりますが、弦は12本あるので実際には「E-E-A-A-D-D-G-G-B-B-E-E」といったチューニングになります。
主弦は6弦ギター同様のチューニングで、副弦は6弦から3弦は主弦よりも1オクターブ高い音、2弦と1弦は主弦と同じ音でチューニングします。
12弦ギターは隣り合う2つの弦をまとめて押さえる、といった違いがあるだけで、演奏方法や音域は一般的な6弦ギターとほぼ同一です。
12弦ギターのサウンド
12弦ギターのサウンドは「きらびやかで広がりのある音」や「豊かな響き」などと形容されます。
独特の音を生み出す秘密は「主弦と副弦の音程のズレ」です。
主弦と副弦を同じ音でチューニングしたとしても、主弦と副弦の間にはわずかな音程のズレが生じます。
この「ズレ」によってコーラスをかけたような美しい響きを得ることができます。
6弦ギターでもオクターバーやコーラスを使うことによって似たような雰囲気を出すことができますが、やはり倍音の美しさや音の広がりは12弦ギターにはかないません。
ストロークで演奏するのはもちろん、開放弦の響きもとても良いため開放弦を活かしたアルペジオで使用されることが多くあります。
12弦ギターの歴史
12弦アコースティックギターは19世紀の終わり頃に誕生しました。
正確な起源は不明ですが、メキシコの民族楽器であるバンドロンやギタラ・セプティマなどの多弦楽器がルーツであるという説が有力なようです。
誕生当初はほとんど普及せず、イロモノ扱いを受けていましたが、1950年代になるとレッドベリー氏やブラインド・ウィリー・マクテル氏などの著名なミュージシャンが使用したことで徐々に普及し始めます。
そして1960年代になると12弦エレキギターの登場も相まって、アコースティック・エレキ共に12弦ギターは多くのギタリストに支持されるようになりました。
1960年代後半になるとその人気は一旦衰えてしまいますが、1970年代になるとレッド・ツェッペリンやイーグルスなど著名なバンドが使用したことから再び人気を集め、多弦ギターの代表格としての地位を築いていきました。
12弦ギターのメリット
豊かな響きを得ることができる
先述の通り12弦ギターは単音弾きでもコーラスをかけたような豊かな響きを得ることができます。
開放弦やアルペジオなどを活かしたフレーズは12弦ギターにしか出せない独特の魅力があります。
この「豊かな響き」こそが12弦ギター最大の魅力です。
ステージ映えする
モデルにもよりますが、12弦ギターはゴージャスなデザインのものが多く、12個並んだペグは迫力があります。
使っている人が少ないことも相まって、ステージでは目立つ存在となります。
12弦ギターのデメリット
弾きこなすのに多少の慣れが必要
これはデメリットというほどのことではないかもしれませんが、12弦ギターは一度に2本の弦を押さえることになるため、綺麗な音を出すには多少の慣れが必要となります。
また、ネックが太いため弾きづらいと感じることもあるかもしれませんが、基本は6弦のものと大差ないためすぐにマスターすることができるでしょう。
ただ、2本の弦を一度に抑える特性上チョーキングはほとんどできません。
個体数が少なく、価格が高め
12弦ギターは大型の楽器店でも数本しか取り扱いがない、なんてことはザラにあります。
個人的な印象ですが12弦ギターは左利き用ギターくらいレアな存在のように思えます。
このため弾き比べて購入する、といったことが難しく、選択肢が限られてしまいます。
また、需要が少ないことから価格も高くなりがちで、6弦ギターと比べるとコストパフォーマンスはあまり良くありません。
弦交換やメンテナンスが大変
当然ですが、弦の数が倍になっているため弦交換の手間も倍かかります。
特に6弦から3弦は1オクターブ高い弦が張られており、かなり細く切れやすいため交換には注意が必要です。
また、本体同様12弦ギター用の弦は実店舗での取り扱いが少ないため選択肢があまりありません。
弦以外にもブリッジやナットといった弦が直接触れるパーツは特殊なものが使用されているので交換部品の選択肢も限られ、メンテナンスの工賃も高くなりがちです。
まとめ
- 12弦ギターは6弦ギターの弦にオクターブ違い、または同音の副弦を追加したギター
- コーラスをかけたような煌びやかな倍音や豊かな響きが特徴
- チューニングや奏法は6弦ギターと同じ
- 19世紀の終わり頃に誕生し、1960年代以降に普及した
- メキシコの民族楽器がルーツと言われている
- 個体数が少なく、価格は高め
正直なところ12弦ギターは6弦ギターと比べると入手性や演奏性、メンテナンス性など、デメリットの方が多いように感じます。
しかしそのサウンドというのは唯一無二であり、多くのデメリットを背負ってでも手に入れたくなるようなギターと言えます。
気になる方はYouTubeなどの動画だけでなく、実際に楽器店に足を運んで試してみるのがおすすめです。