ギターの塗装を考える 〜ラッカー塗装編〜

ギター
ラッカー塗装 ギター 特徴

ギターやベースに限らず車や家の外壁にも塗装が施されていますよね。

塗装には大きく分けて「表面の保護」と「美観」の2つの役割が存在します。

楽器の塗装においてもこの2つの役割はなくてはならない存在なのですが、楽器を塗装することによって少なからず音に変化が生じてしまいます。

ギターの塗装に使用される塗料にはどんな特徴や音の傾向があるのでしょうか。

 

今回はそんな塗料の中でもビンテージギターや高級モデルに使用されていることの多い「ラッカー塗料」にスポットを当て、その特性や音の傾向を紹介していきます。

 

ポリ系塗料編はこちら↓

ギターの塗装を考える 〜ポリ系塗装編〜

オイルフィニッシュ編はこちら↓

ギターの塗装を考える 〜オイルフィニッシュ編〜

シェラック塗装、カシュー塗装などはこちら↓

ギターの塗装を考える 〜その他の塗料編〜

 

スポンサーリンク

そもそも「ラッカー」とは?

「ラッカー塗装」とは色の元となる塗料に揮発性(気化しやすさ)の高い有機溶剤を混ぜ合わせ、スプレー等で吹き付けて着色する塗装方法です。塗装後には有機溶剤が揮発し、塗料の成分だけが残ります。

ちなみに「ラッカー」という名前は昔ラッカーの原料となっていたラックカイガラムシに由来するそうです。

ラッカーにはアクリルラッカーや水溶性ラッカーなど様々な種類がありますが、ギターのラッカー塗装には「ニトロセルロースラッカー」と呼ばれるものが使用されています。

ニトロセルロースラッカーはセルロース(木の主成分)に化学物質などを添加したもの。

ニトロセルロースラッカーはほかのラッカー塗料と比べ色落ちしにくく、高い耐久性を持っているため楽器には最適なラッカー塗料と言えます。

 

ラッカー塗料の特性

1.作業がやや難しく、手間がかかる

ラッカー塗装 ギター

ラッカー塗装は一度に厚塗りしてしまうと液ダレを起こしてしまいやすい塗料です。

液ダレを起こさないために 薄く塗る→乾かす→薄く塗る→乾かす... という作業を繰り返し行う必要があり、手間も時間もかかります。

ただ何度も重ね塗りを行うため塗膜の厚さをコントロールしやすい(薄くできる)のはメリットですね。

最近では手間のかかる塗装というイメージのラッカー塗装ですが、ポリ系塗装がまだ一般的でなかった時代では比較的速乾性が高く簡単に塗装できる部類の塗料だったため、1970年代ごろまでのギターは大抵ラッカー塗装で仕上げられています。

 

2.仕上がりが美しい

塗りムラができにくいことはもちろんですが、ラッカー塗装で形成される塗膜は適度な硬さをもっているので塗装後に「磨き」作業が可能。

磨き上げることで光沢のある美しい仕上がりにすることができます。

 

3.高温多湿な環境、有機溶剤に弱い

ラッカー塗装 注意

ラッカー塗料は気温や湿度の影響を受けやすい性質を持っています。

特に日本のような高温多湿な気候だと、塗装面が溶けてベタついたり色落ちしてしまったりする場合があります。

また、ラッカー塗装のギターは何年も使っていると表面にひび割れ(ウェザーチェック)が入ることもあります。ビンテージギターやレリック加工されたギターにはウェザーチェックが入っているものもありますよね。

ギターの材料である木は気温や湿度の変化によって微妙に膨張と収縮を繰り返すので硬いラッカー塗膜が耐えきれずに割れてしまう、というのがひび割れが発生するメカニズムです。加えて塗膜内の揮発しきれていなかった溶剤が時間の経過とともに揮発していくので塗膜がより薄く、硬くなっていくこともひび割れを発生させる要因のひとつです。

さらにラッカー塗装は塗料を有機溶剤と混合して塗装する手法ゆえ、どうしてもゴム系の素材や除光液等の溶剤に弱くなってしまいます。

ギタースタンドにラッカー塗装のギターを立てかけておいたらスタンドとの接触面が変質してしまった、なんて話を聞くことありますよね。

ラッカー塗装のギターを取り扱う際には注意が必要です。

 

4.塗料の取り扱いに注意が必要

ラッカー塗装 ギター 取り扱い

ラッカー塗料に含まれる有機溶剤を多量に吸い込むと頭痛やめまいを引き起こしたり、最悪の場合有機溶剤中毒により死にいたるおそれがあります。また、引火性も高いので取り扱う際には火気は厳禁です。

ただこれは塗装作業中に注意すべき点で、ギターがユーザーの手に渡る頃には塗料は乾いているため私たちに影響はありません。

もしご自身でラッカー塗装をする場合は屋外などの換気がよく、火気のない場所で行うようにしましょう。

 

ラッカー塗装のギターのほうが音がいい?

ラッカー塗装 音

一般的にラッカー塗装で仕上げられたギターのほうが音がいい、なんて言われますよね。これはなぜなんでしょうか。

 

そもそも音は空気の振動によって伝わるもの。塗膜が厚くて柔らかいと音(振動)は弱くなりやすく、逆に薄くて硬ければ弱くなりにくいと言えます。

そのため塗膜が薄くて適度な硬さをもつ塗料であるラッカー塗料は「鳴りがいい=音がいい」ということがよく言われるんですね。

しかし現在では塗装技術が発達し、ポリ系の塗装でも薄く・硬く仕上げることは可能ですし、近年のラッカー塗料は環境にも配慮した柔らかめの物を使用している場合もあるため「ラッカーだから音がいい」とは一概には言えなくなっています。

 

まとめ

ラッカー塗装、音は良い反面取り扱いが難しい印象ですね。

まとめると、ラッカー塗装のギターには以下のような特徴があります。

  • 塗装の作業が難しく、手間がかかる
  • 仕上がりが美しい
  • 高温多湿な環境やゴム素材、除光液等の溶剤に弱い
  • 塗膜が薄いため楽器の鳴りを邪魔しにくい(音がいい)

もちろんラッカーだけが良くて他の塗装がダメなんてことはありません。最近ではラッカーよりポリ系の方が音がいいなんて言われることもあるくらいですし。

ラッカーに限らずどんな塗装方法にも一長一短がありますので自分の求めるスタイルにあった塗装のギターを選びましょう。

 

 

 

 

スポンサーリンク
スポンサーリンク
みやちをフォローする
エレキギター解体新書