その名の通りピッチ(音階)をシフト(移す)させるエフェクター、ピッチシフター。
ビートルズやスティーヴ・ヴァイ氏などの使用で有名なエフェクターです。
色々な使い方ができる便利なエフェクターですが、今回はそんなピッチシフターの特徴や歴史について紹介します。
ピッチシフターのサウンド
ピッチシフターを使用すると原音に加えて音階の異なる音が付与されます。
音に厚みをもたせたいときや一人でハモらせたいとき、チューニングを変えずにダウンチューニングで弾きたいとき、ワーミーを使用してアームのような効果を出したいときなど、ピッチシフターの使い方は多種多様です。
多くのピッチシフターは以下のようなつまみで構成されています。
- SHIFT (PITCH):原音に対するシフト量を調節
- BALANCE:原音とエフェクト音の比率
- KEY:キーの選択(ハーモナイザーのみ)
- SCALE:スケール(メジャーorマイナー)の選択(ハーモナイザーのみ)
製品によってはモード切替やボリュームなどが付いているものもありますが、基本的にはこんな感じです。
ピッチシフターの仕組み
基本的にピッチシフターはデジタル回路です。
ギターから送られてきた信号をデータ化し、ピッチを変える処理をします。その後データを再び信号へ戻して出力する、といった仕組みです。
複雑なデジタル処理をコンパクトなペダル内で行っているため、ピッチシフターは音質の劣化やレイテンシー(遅れ)がどうしても発生してしまいます。
最近の製品は技術の発展もあり、昔ほどデメリットが気にならなくなってきています。
ピッチシフターの種類
1.ピッチシフター
ピッチシフターは、「原音から任意の音階だけ上げ下げした音を出力するエフェクター」です。
エフェクト音だけ出力すれば、チューニングを変えることなく半音下げの音にできたり、指板上では出せない高い音を出したりすることが可能。
原音とミックスして使う場合は、単音弾きでパワーコードを再現したり、オクターバーとして使用することもできます。
また、ペダルやフットスイッチを駆使して自在に音程を変えられるワーミーペダルもピッチシフターの1つです。
2.ハーモナイザー (インテリジェントピッチシフター)
現代で「ピッチシフター」というと、こちらのハーモナイザーを指す場合がほとんどです。
任意の音階だけシフトするピッチシフターに対して、こちらのハーモナイザーは指定したスケールに即した音階へシフトしてくれるエフェクトです。基本的に原音とミックスして使用します。
メーカーによって名称が違いますが、機能はほとんど同じです。
スケールとシフト量さえ指定してしまえばあとは自動で音階を検出してくれるため、ひとりでもツインギターのようなハモリや厚みを生み出すことが可能。
ピッチシフターの歴史
ピッチシフターは、録音テープを早回ししたり遅く回したりすることで音階が変わるというのが発見されたのが始まりです。時代でいうと1950年代あたり。
この効果はレス・ポール氏をはじめとした1950〜60年代のミュージシャンの一部に使用されていました。
それから時は流れ1970年代初頭、世界初のラック式ピッチシフターEventide H910が発売されます。H910の発売を機に、それまであまり実用的でなかった「ピッチシフト」というエフェクトが徐々にメジャーになっていきました。
そして1987年にペダルタイプのピッチシフター BOSS PS-2 が、1994年にはペダルタイプハーモナイザー BOSS HR-1 が発売され、ピッチシフターはギタリストにも広く使われるようになっていきます。その後 Digitech Whammy などにも注目が集まるようになり、ピッチシフターはエフェクトの1ジャンルとして定着していきました。
おすすめピッチシフター
BOSS / PS-6
おなじみBOSSのピッチシフターです。(商品名はハーモナイザーですが)
シンプルなコントロールながら2オクターブ以上の幅広いピッチシフトや、デチューンと呼ばれるBOSS独自の「揺れないコーラス」など、様々な機能を搭載しています。
また、別売りのエクスプレッションペダルをつなげることでワーミーとしても使用できるなど、見た目以上に幅広い使い方ができるペダルです。
TC ELECTRONIC / Quintessence Harmonizer
このペダル最大の魅力は何といってもTone Printと呼ばれる機能。
Tone PrintはPCやスマホのアプリとペダルを同期させ、設定をいじることができる機能です。ペダルに搭載されたスイッチやつまみだけでは設定できない細かな調節も可能となります。
ピッチシフターにありがちなデジタル臭さがほとんど感じられないのも嬉しいポイント。
DIGITECH / Whammy 5
ピッチシフターの代名詞とも言えるペダルです。
登場から改良を重ねており、音痩せが少なくなったりMIDIに対応していたりと時代のニーズに合わせたペダルへと進化しています。
筐体をコンパクト化したWhammy Ricochet、より多機能なWhammy DTなどの姉妹品もいくつか存在します。
まとめ
- 音階をシフトし、ハモらせたり音に厚みをもたせたりするエフェクト
- テープの早回し、遅回しが起源
- ペダルタイプのピッチシフターがBOSSより1987年に登場
- ピッチシフターとハーモナイザーとがある
ピッチシフター、市場に出回っている製品の数はそれほど多くありませんが、製品ごとに機能やサウンドに特色があります。
購入の際には試奏や動画でチェックし、自分にあったペダルを選びましょう。