数ある変形ギターの中でも代表的な存在なのがギブソン・フライングVです。
アルファベットの「V」のような形のボディシェイプはインパクト抜群で、ステージ映え間違いなしのギター。
今回はそんなフライングVの歴史や特徴に迫っていきたいと思います。
歴史
フライングVはエクスプローラーと共に1958年に登場しました。
当時はストラトキャスターなどのフェンダー製のギターが一世を風靡しており、ギブソンは時代遅れのギターメーカーといった印象を持たれていました。
そこでギブソンはそんなイメージを打破するため革新的なデザインのギターをいくつか開発を行い、誕生させたのがフライングVです。
それまでのギターの常識を覆す革新的なデザインのギターでしたが、逆に革新的すぎて全く売れず、100本ほどしか生産されないままわずか2年ほどで販売終了となってしまいます。
しかし生産が終了してしばらく経った後、アルバート・キング氏やジミ・ヘンドリクス氏が使用し始めるとフライングVは徐々に人気を集めるようになります。
そこでギブソンは余った材料を使って1963年から少しづつ生産を再開し、1967年にはレギュラーラインナップとして販売されるようになりました。
今では1958年、1959年製のフライングVは数あるビンテージギターの中でもトップクラスの高値で取引されています。
サウンド
カッタウェイ部分がないボディシェイプゆえネックからボディに振動が伝わりにくく、鳴り自体はさほどよくありません。
このためやや高域が出るといった特性は持つものの、ピックアップやエフェクター、アンプの性格が出やすくなります。
クリーン〜クランチというよりかはハードロックやメタルなど激しく歪ませるのに向いたギターです。
構造
ボディ
初期モデルのボディはコリーナ製でしたが、1967年以降の再販モデルにはマホガニーが使用されています。現状ギブソンにはコリーナ製のフライングVはラインナップされていませんが、稀に限定でコリーナ製のフライングVが販売されています。
また、初期モデルと再販モデルとではピックガードの形状が若干異なります。(再販モデルはピックガードが大型化)
独特なV型のボディシェイプはカッタウェイがないためハイポジションの演奏性は良好です。
一方でV型であるがゆえ立って演奏するにもヘッド落ちし、座って演奏するにも膝の上に起きにくい、といったデメリットがあります。座った時の演奏性を向上させるためボディ側面にゴム板が貼ってあるモデルも近年登場しています。
ネック/指板
セットネック方式でジョイントされたネックもボディと同様に初期モデルはコリーナ、再販モデルにはマホガニーが使用されています。
ヘッドは伝統のギブソンヘッドストックではなくフライングVオリジナルデザインのものを採用。
指板は初期モデルから一貫してローズウッドですが、カスタム等の一部モデルにはエボニーが使用されています。
ブリッジ/テールピース
初期モデルはギブソンお得意のチューン・O・マチックブリッジにテールピースのないテレキャスターのような裏通し固定の組み合わせです。
一方で再販モデルはブリッジはレスポールなどと同様チューン・O・マチック+ストップバーテールピースを採用しており、一部マエストロ・ヴァイブローラーと呼ばれる板バネ式のビブラートユニットが搭載されています。
ピックアップ
ピックアップはレスポールと同型のハムバッカーが搭載されています。
現行モデルにはBurstBucker3のような比較的パワーのあるピックアップが搭載されています。
他のギブソン製ギターとは異なり、P-90ピックアップがマウントされたモデルはほとんどありません。
名前の由来
ボディがV字型だからフライングV、見た目そのまんまのネーミング。
渡り鳥がV字型に隊列を組んで飛ぶ様子を見て名付けられたとも言われています。
いろいろなフライングV
フライングV2
フライングVの進化版として登場したギターです。
ボディシェイプは通常のフライングVと共通ですが、ウォルナットとメイプル5層に重ねて作られたボディとネック、エボニー製の指板と、中身は全くの別物となっています。
それ以外にもSGのようなボディの外周加工(ベベルドエッジ)、V字型のピックアップ(1979〜1981年のみ)など、新しい試みが随所に取り入れられたモデルです。
1979年に発売されましたが、大して売れず1982年には生産を終了しました。
リバースフライングV
その名の通りフライングVのボディを180度反転させたシェイプをしています。ヘッドもこれに合わせてフューチュラと同型のVシェイプが採用されています。
超奇抜なボディシェイプ以外のスペックは通常モデルとほぼ同一。
2007年に限定モデルとして登場しましたが、予想を上回る反響を受けて翌2008年にも限定モデルとして販売されました。